近年、日本各地で、これまでの想定を超える豪雨に見舞われることが増えてきています。
滋賀県においても、平成29年の台風21号に伴う集中的な豪雨により、河川の堤防が決壊し、約150haもの広範囲の土地が浸水被害を受けました。
この浸水被害に伴い、油を使用していた工場も水没したため、工場内の油槽の油(約18,000L)が周辺地域一帯(約40ha)に流出し、流出した油が琵琶湖まで到達するという事案が発生しました。
多量の油が周辺地域に流出した結果、農産物への被害や農地復旧に多額の費用が生じるとともに、油の拡散防止対策が終了するまでには半年以上の時間を要することとなりました。
こうした事例を教訓として、油や有害物質などの流出による環境汚染事故を未然に防ぐためには、施設の老朽化や機器の操作ミスなどへの対策を講じることに留まらず、浸水等の水害リスクも想定し、計画的に備えておくことが必要です。
浸水による環境汚染事故を未然に防止するため、各事業場において想定される浸水深さや、各事業場の業態・取扱品目などを踏まえて起こりうる事故を想定し、必要な対策を計画的に行っていただくことが大切です。
各事業場において必要な対策を進めていただくための参考として、浸水に伴って起こりうる事故の想定例や、浸水への対策の取組事例を紹介します。
各事業場の事業地において想定される「水害リスク」は、滋賀県ホームページの「滋賀県防災情報マップ」で確認できます。
(1)浸水に伴って起こりうる事故の想定例
●油や有害物質等の流出
表面処理施設等の特定施設、貯油施設や油水分離施設などの水没により、貯蔵・使用・処理等を行っていた油や有害物質等が流出する。倉庫等に保管している原料や製品が流亡する。
●設備や機器への被害・電源喪失に伴う設備の制御不能
ポンプの停止や処理施設の故障などにより、油や未処理水などが周辺環境に流出する。
●水没による水蒸気爆発・化学反応による発火等
炉や高温になる施設の稼働中に浸水が起こることで水蒸気爆発が起こり、使用していた物質が周辺環境に飛散する。水と化学反応を起こす物質により、発火したり可燃性ガスが生じたりする。
など
(2)浸水対策の取組事例
●土嚢や止水板などの浸水を防ぐ資材の準備(図1,図2)
●防水壁の設置や施設等の嵩上げ(図1,図3)
●事前に油や有害物質等を浸水影響のない場所へ移送(図4)
●敷地内の水を排水するポンプの設置
●炉や高温になる施設の事前停止
●水と化学反応を起こす物質等を2階などの高所で保管
●自然災害対策マニュアルの作成や対策訓練の実施
など
(1)事故時の措置
水質汚濁防止法の特定事業場や貯油施設等を有する事業場から、油や有害物質等が流出してしまった場合などには、直ちに応急の措置を講じるとともに、速やかに事故の状況と講じた措置の概要を県(地域を所管する環境事務所あて)に届け出なければならないこととなっています(水質汚濁防止法第14条の2等)。
【事故時の措置の届出先】
●南部環境事務所:電話番号077-567-5444
(所管地域:草津市、守山市、栗東市、野洲市)
●甲賀環境事務所:電話番号0748-63-6133
(所管地域:甲賀市、湖南市)
●東近江環境事務所:電話番号0748-22-7758
(所管地域:近江八幡市、東近江市、日野町、竜王町)
●湖東環境事務所:電話番号0749-27-2255
(所管地域:彦根市、愛荘町、豊郷町、甲良町、多賀町)
●湖北環境事務所:電話番号0749-65-6650
(所管地域:長浜市、米原市)
●高島環境事務所 0740-22-6066
(所管地域:高島市)
※大津市内にあっては、大津市環境部環境政策課077-528-2735 が水質汚濁防止法を所管
(2)連絡
水質汚濁防止法以外の法令に基づく対応や地域住民の方などへの対応のため、関係する市町、消防・警察等の行政機関、下流等の利害関係者(漁業協同組合・土地改良区等)への連絡も必要です。
水害リスクに伴う環境汚染事故未然防止のための計画的な備えについて、資料を作成しましたのでご利用ください。
●令和元年度に発生した自然災害による水質汚濁事故事例等について、環境省において下記のとおり取りまとめられています。
●令和元年に佐賀県で発生した浸水による油の流出事案を踏まえ、佐賀県においては下記報告書が作成されています。