みなさん、滋賀県には約1300ヶ所もの城跡があるのをご存じですか。
城というと巨大な天守や高い石垣を思い浮かべますが、城がそのような形になったのは、江戸時代になってからのことです。それ以前の城は土を土台として、小屋のような建物が建つ、とても簡単なものでした。鯱瓦(しゃちほこがわら)も天守も石垣もない城。実はそのような城の痕跡が、県内いたるところに残されています。家の裏山、在所の森などに姿を変えているかもしれませんが、かつてはそこに確かに城が存在していたのです。
滋賀県安土城郭調査研究所は、そうした様々な城郭についての調査研究を進め、情報を発信することを目的としてつくられた施設です。平成20年度からは文化財保護課の城郭調査係として城郭の調査研究を行ってまいります。城郭の調査研究の具体例としては、特別史跡安土城跡の調査整備事業を行っています。安土城は、織田信長が天下統一の拠点として築いた大城郭で、豪壮華麗なその姿は、遠くヨーロッパにまで伝えられています。そしてこの安土城こそが、現在城のイメージとして定着している天守や石垣を最初に導入した城なのです。しかし築城後、わずか十年ほどで安土城は失われてしまい、その姿は幻となってしまいました。研究所では、この安土城を考古学や文献史学、建築史学など様々な方面から調査研究してその姿や歴史を明らかにするとともに、城跡を永く保存し、多くの人々に親しんでもらうために環境整備事業を進めてまいりました。
また、安土城の隣には、中世近江を支配した守護佐々木六角氏の居城であった史跡観音寺城跡があります。全国屈指の巨大山城であり、例外的に安土城に先行して石垣を多用した城として知られています。この観音寺城跡についても、石垣調査と部分的な発掘調査を実施しました。