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杉野中薬師堂

杉野中薬師堂
  • 名称:杉野中薬師堂【すぎのなかやくしどう】
  • 員数:1棟
  • 構造形式:桁行五間、梁間三間、一重、切妻造、妻入、桟瓦葺【附厨子:1基一間厨子・入母屋造・妻入・正面軒唐破風付・こけら形板葺、鰐口:1口寛永十七庚辰歳正月の刻銘がある】
  • 所有者:杉野中自治会
  • 所有者の住所:伊香郡木之本町大字杉野
  • 所在地:伊香郡木之本町大字杉野
  • 建物の概要

薬師堂は、滋賀県最北部の木之本町を南流する杉野川中流の狭小な谷間に開かれた杉野の集落に所在する。
薬師堂は、古くは福王寺に属していたが、現在は杉野中自治会によって管理されている。福王寺の歴史は詳細にはわからないが、鰐口銘から寛永17年(1640)には寺院として活動していたと思われる。
薬師堂の建立年代は明確ではないが、側柱の風蝕や、柱の面の幅から16世紀後期の建築であると考えられる。
建物は桁行五間、梁間三間の妻入、屋根は切妻造の桟瓦葺で、ほぼ南面して建っている。外観は、屋根を切妻造の桟瓦葺とし、正面一箇所、左側面一箇所に入口、右側面一箇所に窓を設ける以外は全て竪桟付きの板壁とする。
正面から奥行き四間を広い一室の外陣とし、後方一間を内陣とする。内陣は中央間を格子戸で仕切り、入母屋造、妻入の一間厨子を安置する。東脇間は物入、西脇間は床を一段上げて後方半間を物入とする。
薬師堂は、一般的な仏堂とは趣が異なり、切妻造、妻入で、奥行きが長く、身舎と庇から構成される古代以来の二面庇形式を守り伝えている。柱が太く、大梁、繋梁を架け、さらに登梁で棟木を受ける構造が独特で、装飾性を排した素朴な建物である。このような形態を持つ仏堂は、伊香郡の限られた地域にのみ伝えられており、本県の極めて地域性を帯びた建築として、貴重である。さらに堂内において、新しい年の五穀豊穣と村落の無事を祈念し、村落組織の結束を確認する行事である「オコナイ」と呼ばれる湖北地方の行事の一部が行われ、古くから庶民信仰の場となっていることとあわせて価値が高い。