口径が1尺に満たない小型の鐘で、喚鐘(かんしょう)に分類される。本品の特徴は、和鐘と朝鮮鐘(ちょうせんしょう)の双方の要素を備えていることである。すなわち上下縁に文様帯を設けただけで本体に袈裟襷(けさだすき)を施さないことや、乳廓を設け、一廓あたり3列3段の乳(ち)を配置することは朝鮮鐘の特徴であり、双頭形の竜頭(りゅうず)や駒の爪を有すること、笠型に旗竿(はたさし)と呼ばれる円筒形飾りがないことなどは、和鐘の特徴である。このような形式の鐘を、和韓混交鐘(わかんこんこうしょう)と呼んでおり、本品もその典型である。現存する和韓混交鐘の作例は九州や山陽道を中心に全国で5例確認されており、本品は新出資料として6例目に加えられる。しかも、5例中現存最古の在銘作例として著名な、長崎県対馬・厳原町所有で重要文化財に指定される応仁3年(1469)銘銅鐘をさらに半世紀さかのぼり、現存最古の作例であることが判明した。
制作者(鋳物師(いもじ))は残念ながら記されていないが、施主名の道源・道金・浄圓の名は、当社が伝える応永29年(1422)の墨書銘を有する棟札にも記される。現存最古の銘文を有する和韓混交鐘の新出資料として評価できる。