自主防災活動手引き集(今井陸之助さん)
- 所属団体・役職等:(一社)能登川地区まちづくり協議会安全・安心事業部長
- 所属団体概要: 平成19年3月に任意団体として発足し、東近江市能登川地区(平成29年現在53自治会・人口約23,000人)におけるまちづくりの推進役として、企画から実行まで幅広い活動に従事。平成25年には、同協議会が防災功労者防災担当大臣表彰を受賞。同年4月1日から一般社団法人化した。
- 活動実績(活動歴):発足時から協議会の活動に参画し、安全・安心事業部にて、各自治会の自主防災組織の設立や、防災意識の向上などに取り組んでいる。
- 災害時にボランティアを受け入れるために、普段からの仕組み作りが必要
- 安否確認のできる人間関係づくりをめざす
- 「e-防災マップ」を活用し、地域の防災情報の共有・継承を図る
Q.協議会で自主防災活動に力を入れ始めたのはなぜですか?
- 能登川地区まちづくり協議会は、もともとは「この指止まれ」方式で発足した任意団体で、他の団体はやっていないことをやろうという雰囲気が発足時からありました。
- 平成21年9月に兵庫県佐用町で発生した水害では、県社協のボランティアバスを利用し、協議会で支援活動に参加しましたが、ボランティアとしては、地元の指示なしに活動すると後でクレームを受けることもあるので、指示がないと動くことができないことが分かりました。その時の経験から、自治会長や防災リーダーは、必要な支援を受けることができるよう、災害時には地域の状況を速やかに把握して、外部支援者に的確な要請をする必要があると実感し、そのための活動に取り組み始めました。
- 平成23年の東日本大震災では、協議会として、東松島市や気仙沼大島など、被災地へ5度にわたり、ボランティアバスを送り出し、支援を行いました。現地では、ボランティアセンターの情報収集が一部的なものであったったため、センターからの十分な指示がなく、ボランティアとしては、活動したいけれどもできないもどかしい状況がありました。この経験を通じて、災害時に被災地に起こりうる状況を理解するとともに、佐用町の時以上に、災害に備えた普段からの仕組み作りが大切だと感じました。
Q.協議会の活動する能登川地区はどのような地域ですか?
- 災害の面からいうと、能登川地区は、愛知川の氾濫や、埋立地での液状化などのリスクが懸念されています。
- 高齢者の割合は、地区平均で約25.8%(平成29年4月現在)、高いところでは35%を超える地域もあります。総人口は、ここ数年ほぼ横ばいの状態が続いています。
Q災害に備えた仕組み作りとして、取り組まれたことはございますか?
- 自主防災活動は、基本的には自治会ごとに取り組んでいく必要があります。このため、協議会では、共同募金会と東近江市からの助成を受け、平成22~24年の3カ年にかけて、自治会長向けに自主防災リーダー研修会を実施しました。リーダー研修会は4日間の日程で、レスキューストックヤードの栗田さんによる基本的な防災知識・意識についての講義、山口大学の瀧本さんによるDIG研修、南三陸町社会福祉協議会の猪又さんの被災体験談、消防職員の救命・救急講習などを行いました。
- 地域に「かまどベンチ」を10か所程度設置しています。近くを通ると、目につくので、防災を意識することができます。また、「かまどベンチ」は、防災とは関係のない夏祭りなどのイベントで活用しています。50人、100人分の炊き出しは、初めはなかなかうまくいきませんが、その体験が災害時に生かせるのではないのでしょうか。 (※現在は、東近江市の直轄事業として実施されています。)
Q.自治会には、どのようなことを期待していますか?
- 自治会長は、それぞれの地域によって役割が異なるので、あまり過度の期待を求めてはいけないと思っています。今まで作り上げた自主防災活動が止まってしまうことがないよう、最低限こなすべきポイントをいくつか絞って示してあげるべきだと思います。
- 自治会には最低限、災害時の初動として安否確認ができる人間関係づくりを期待しています。死後1、2週間後に初めて見つかる孤独死が、ニュースとなることが時々あります。個人情報保護制度は、それを隠れ蓑にして、「安否確認は自治会や自主防災組織ではできない、行政にまかしておけ」という方向へ行きかねません。自治会長一人が対応できるのは、私の経験では、多くても200世帯程度ですので、自治会の各役員が隣近所と人間関係をつくり、災害時に各地区でできることは各々でできるようにしなければならないと思います。
- 我々協議会としても、自治会ごとに状況が違うことを踏まえて、各自治会が本気で取り組んでくれるよう、それぞれの自治会長と直接話をし、自治会ごとの特性を把握しながら、自治会長や民生委員などが効果的に連携できるテーブル作りに努めたいと考えています。
Q.自治会と行政との関係についてはどうお考えですか?
- 行政は、自治会や自主防災組織へ期待することを、より率直にオープンにするとよいと思います。災害時にはこういう情報を行政へ伝えてほしい、という簡単なことでも結構かと思います。
Q.協議会で取り組みを進めた結果、能登川地区の自主防災活動の現状はどうですか?
- 全53の自治会のうち、46の自治会で自主防災組織(自警団を含む)ができるなど、組織化が進んでいます。
平成25年の台風第18号では、一部で冠水被害が起きましたが、地域で災害ボランティアを募ると、40名程度が駆けつけてくれました。普段からの取組で、地域の皆さんの意識も高まっているのではと感じています。な
お、この台風に関しては、全自治会へ対応状況のアンケートを実施しましたが、愛知川流域の自治会など被害が過去からある地域は、消防団がすぐさま体制をとったり、1時間ごとに状況を記録し、行政へ報告を上げるところもありました。意識することなく、防災が生活のリズムに入っているようです。
- 自治会からは、自主防災について、協議会へ相談に来られるケースが増えてきました。各自治会が問題意識を持ってくれたことの表れだと思いますので、こういった相談をしてくる人が一人でも増えればうれしいです。
- 協議会では現在、「e-防災マップ」の作成に取り組んでいます。「e-防災マップ」とは、国立研究開発法人防災科学技術研究所が無償公表しているWebマッピングシステム(Web-GIS)を活用し、地域の防災資源や危険箇所をはじめ、災害時に行う対応や、日頃行う防災活動などを地図に表したものです。「e-防災マップ」は、インターネットを通じてアクセスできるので、グループ内や外との情報共有を行うことができます。
- 協議会の作成する「e-防災マップ」は、県の「地先の安全度マップ」や市のハザードマップを重ね合わせて、活用できます。
- 同じような地図は、今までも、紙媒体で作成していましたが、「e-防災マップ」は、インターネットによりアクセスできますので、年度が替わり自治会の役員が変わっても、引継ぎが容易です。また、協議会内の53自治会が同じ仕組みを使うことで、被災したある自治会を他の自治会が支援する場合に、役に立つのではと考えています。
- 要配慮者の情報を「e-防災マップ」に反映させたいと考えておりますが、情報管理の方法が、今のところ課題だと感じています。防災科学技術研究所に相談しながら、作成を進めたいと考えています。
地域の関係者に対し、パワーポイントで、自主防災会活動事例(「災害時要援護者避難支援」を含む)を報告し、実現のためのポイントを理解してもらう取り組みです。
- 活動の詳細な手順は、「活動手引きシート」を御覧ください。
→活動手引きシート(パワーポイントによる自主防災会活動事例報告)
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(1) (PDF:420 KB)
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(2) (PDF:133 KB)
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滋賀県知事公室防災危機管理局防災対策室
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