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2023年度(令和5年度)「ココロさんの ひとりごと」

コラム「ココロさんのひとりごと」

No.31(2024年2月)持続可能な心の成長

 最近、『SDGs』という言葉をよく見かけます。『持続可能な開発』のための国際目標で、地球環境の深刻な問題や国際紛争、差別や貧困などに世界全体で取り組もうというものです。このうち、CO2の削減や森林・海洋の保全などは、利益を求める企業にとっては、一見、制約を与えるものと思われがちですが、企業が長期的に発展していくためには必要な取り組みです。ふと、「人間の心についても、地球の資源と同じように考えられるのではないか」という思いが頭に浮かびました。

 心のエネルギーをどんどん使っていくばかりでは、やがてすり切れてしまいます。一度ダメージを受けたら、復活させるまでに長い時間と手当てが必要になることも、地球の資源と似ています。私たちは、小学生のときから、「がんばることは良いこと」と教わってきました。勉強をがんばって、運動をがんばって、習い事をがんばって、友達づきあいをがんばって、お手伝いをがんばって・・・。弱音を吐かない、人に頼らない、あきらめない。そうすることが、強い子、強い心の持ち主と思われてきました。もちろん、心のエネルギーが十分にあるときは、がんばればよいし、その努力の末に、偉業を達成する人たちもいるでしょう。けれど、がんばり続けた末に、疲れ果てて、体をこわしてしまうこともあります。

 心のエネルギーにも限りがあるし、どれだけがんばっても、できないことはあります。どこかで、自分の力を知って、不可能なことは受け入れて、折り合いをつけて生きていくことが必要になります。もしかすると、これが、子どもから大人になるということなのかもしれません。

 不登校になったとき、周囲は、「もっとがんばれ」と言います。実際に、本人は、ギリギリまでがんばります。でも、「これ以上がんばれない」というときが来て、学校を休みます。ここが転換点ではないかと私は思います。「やればできる!」というこれまでの価値観から、「できることをする」「自分に合ったやりかたでやる」「助けを求めながらやる」という方向に変えていくことが大切です。それもできないほど、エネルギーを使い果たしたときは、一度休むということも、将来のための大切な選択です。小中高生の人生は、この後80年も90年も続く可能性があるのですから。

 SDGsで地球を守ることを自分の心に置き換えて、負荷(ふか)をかけすぎず、一人ひとりが『持続的に成長』していけたらいいなと思います。

No.30(2023年11月)脳を健康にするにはいい季節!

 11月になり、街路樹や山の木々も色づき出しました。あれだけ暑い暑いと言っていた日々がずいぶん遠くに感じられます。人の感覚・記憶とはうまくできでいるものですね。今回の「ココロさんのひとりごと」の題が、なぜ、「脳」なの?と思われる方もおられると思います。「脳」は私たちの思考や気分、感情などの「こころ」や睡眠・食事などの健康維持にも重要な関わりがあります。この脳を元気にできればいいですね。

 さて、季節は秋。秋と言えば・・・食欲の秋、美味しいものがたくさん店先に並んでいます。旬の食材をバランスよく食べることで楽しく食事ができます。また、秋と言えば、そうスポーツの秋。運動しやすい気候になりましたので、普段あまり運動ができていない人も、散歩や散策などから始めてみるのはどうでしょうか。ウォーキングやジョギング、水泳など、身体を動かすことで健康状態も良くなり、ストレスの解消や気持ちが落ち着いたりします。そして散歩程度の強度の低い運動(人と会話をしながらできる程度)でも脳の成長や機能を促進するのに必要な栄養が脳内に分泌され、脳の実行機能(目標のための計画を立て、目標を達成するために自分の行動や思考、気持ちを調整する機能)や認知機能(理解・判断・論理などの知的な機能)の活動が促進されるという報告もあります。

 普段やらない事を始める時、最初の一歩は踏み出しにくいですが、家族や友人などと一緒に始めてみてください。普段運動をしない人にとっては、運動するということ自体がストレスに感じるかもしれません。最初はストレスにならない程度でいいと思います。「今日から毎日頑張るぞ!」や「続けなければならない」と思ってしまうとよりストレスになってしまいます。無理せず続けることで「脳」は徐々に楽しいと思うようになり、より強度が上がり、回数も増えてきます。そして一人で取り組むより複数でやった方がその効果はより大きくなるようです。誘いあって始めてみてはどうでしょう。

 また、バランスのよい食事をすることで「脳」の活動の材料となる栄養素も補給することができます。運動の後の楽しみに、秋の美味しいものを食べるというのもよいですね。

★おうちの方へ★

 学校に行きづらくなっているお子さんも、運動することで、「今日は行ってみようかな」と思った時に、気持ちの面だけでなく、実際に「動き出せる身体」に近づけると思います。一度、秋の風景を見に散歩や散策にお子さんを誘ってみてはどうでしょう。

No.29(2023年9月)感情って全部大切!

 今年の夏はとても暑かったですね。この夏楽しい体験ができたでしょうか。暦は秋に突入していますが、まだまだ暑い日が続きそうなので、バランスよく食べて、お風呂で温まって、たっぷり睡眠をとって、このまま元気に乗り切りたいですね。

 さて、今回は、「感情」についてのお話です。

 私たちが日々体験する感情には、「楽しい」「うれしい」「誇らしい」ももちろんたくさんありますが、「つまらない」「嫌だな」「苦しい」「つらい」「悲しい」「寂しい」「うらやましい」など、できれば体験したくない不快な感情もたくさんありますよね。こんな感情がなかったら、ずーっといい気分ですごせるのに、なぜ私たちには「不快」な感情が備わっているのでしょうか。

 私たちが「不快」と感じると、それを「何とかしよう」「危ない」と感じて回避したり解決したりする行動をとろうとします。回避行動、対処行動をとることで、安全な状態を保つことができます。「不快な気持ち」は「このままの状態でいるのはまずいぞ」という重要な信号をおくってくれている大事でありがたい感情なのです。

 そして、「快い気持ち」しか感じられない状態を想像してみたら、きっと「飽き」てしまうこともわかるのではないでしょうか。少なくとも「まあ楽しいは楽しいけど、普通かなあ」というように、「快」の感覚が弱まってしまうことでしょう。そう考えると適度に違う感情を体験することは、ひとつひとつの感情を新鮮に受け止められる効果も生んでいるといえるでしょう。ですので、泣いたり笑ったり、怒ったり、様々な感情を経験することで、私たちの生活の質をゆたかにできるといえるかもしれません。一方で、嫌なことが続くと「もうこのまま良いことなんておきないんじゃないか」と考えてしまうこともありますね。つらい気持ちが心の中にいっぱいになると、普段なら思いつく解決策も思いつかなくなって先のことが考えられなくなったり、考えるだけで嫌な気持ちが押し寄せてくるので考えたくないと思ったりすることもあるでしょう。

 そんな時は小さな気晴らしをして、少しだけ違う気持ちを味わうことを試してみてください。

 また、自分の外に嫌な出来事を一度取り出すイメージで、人に話す、紙に書いてみるということも役に立つことがあります。そのことですぐに問題解決するわけではありませんが、ちょっとだけ気分を変化させることで少し落ち着き、問題の全体像を「眺める」ことはしやすくなります。全体が見えると、今できそうなことや、解決に向けてのイメージ(何がどうなったら少し楽になるか)が見えてくることも多いものです。「誰かに話してみること」のお手伝いは、いろいろな相談機関でさせてもらえると思うので、利用しやすいところに連絡してみてください。

 これからの季節、活動しやすい気候にだんだんなっていくので、ぜひ、いろいろなことをやってみてください。それを通じてつらいことも楽しいことも、様々な気持ちを経験できるゆたかな時間がすごせるといいですね。まずは、しっかり栄養をとってしっかり寝て元気にすごして、もう少しこの暑さに耐えて夏をのりこえましょう。

 

No.28(2023年7月)「自己調整力」ってなに?

 夏になりました。今年の夏休みは思い切り活動的に過ごしたいと楽しい計画を立てていることでしょう。長い夏休みには、楽しい計画があると同時に、学校の宿題や課題があります。最終日に慌てないように学習計画を立てる時には、できるだけ短い期間にたくさんの量をこなして、宿題や課題を終わらせたいと、皆さん、考えますね。確かに、集中して早く終わらせると気持ちがいいですね。しかし、あまりにも理想的な計画を立てすぎて計画通りに進まず、焦ってしまったり、途中でやる気が低下してしまって休みの後半に「計画倒れ」になった経験はありませんか。

 計画を立てる時は、まず自分の現実を見つめてみましょう。計画する一日の学習量が、理想的すぎる量になっていませんか。学習時間を長くとっても学習量が充実する良い計画とは限りません。適度な休憩も必要ですし、何よりも自分の楽しみの時間も必要です。

 学校での毎日には、「授業」と「休み時間」、「給食」や「部活動」もあって、一日中学習をしているわけではありません。

 学校ではなく、家で過ごす日に、頑張ればできるであろう学習量を詰め込んでしまいがちですが、もう一つ、一日の最低限度の量も決めることをお勧めします。理想通りに進まなくても、少なくとも自分で自分を許せる量ができれば満足感を得ることができますし、予定より完成日が延長してしまっても最終日まで持ち越すことはないでしょう。何よりも無駄に焦ったり、自分の出来ないことを責める気持ちにならず、取り組みへの意欲を保って最後まで取り組み、「計画倒れ」に終わることはないでしょう。

 このように現実のありのままの自分を見極めて、できる範囲の内容を決めていくことは、理想だけを追うことではなく、着実に目標に進むことができます。理想的に過ごせた日もそうでない日も、ありのままの自分を知ってそんな自分を受け入れられることで、次の意欲もわいてきます。このように、自分の気持ちと行動を調整する力を「自己調整力」と呼びます。自己調整力は目標に向かって進む「持続力」につながります。これからの人生であなたを助けてくれる力となるでしょう。

 この夏休みは、「自己調整力」を意識して過ごしてみてください。きっと、気持ちよく2学期を迎えることができるでしょう。

 

No.27(2023年5月)気持ちとおいしさ

 疲れたときはどうしますか?ほっとするときはどんなとき?自分にご褒美を!…などなど様々な言葉があるように、ストレス社会で生きる私たちは、不快さをどのように減らし、気持ち良さをいかに見出すかということに日々努力していると言っても過言ではありません。しかしまた、「これをやったら100%元気になる!」というのがないのも世の常です。

 例えばお菓子を一つ食べるということを考えてみましょう。どんなときに食べると一番おいしいでしょうか?朝の目覚めに食べるのか、昼ごはんの後に食べるのか、お茶を入れて誰かと一緒に食べるのか、はたまた部屋の隅で一人隠れて食べるのか…人によっても、そして状況によってもおいしさは左右されるのではないでしょうか。「あの時食べてすごくおいしかったから、後日買ってみたけれど、以前ほどおいしくは感じなかった」ということは、ままあります。実際、私も学生のときにこれとまったく同じことがありました。友達が授業の空き時間にチョコレートをくれたので一緒においしく食べたのですが、別の日にお店で買って一人でそれを食べたら、普通のチョコレート味しかしなかった…というものです。当時の私はきっと、友達からもらった嬉しさや、おしゃべりの楽しさ、授業の合間のほっとした気分も手伝って、そのチョコレートをとてもおいしくありがたく食べたに違いないのです。

 おいしさは状況によって変わるものであり、それを受け取る自分の状態にもよるということ。例えば、慣れない人々に囲まれ、緊張する場面でどれだけ好きな食べ物が出されても、「ノドにつかえて食べた気がしない」ということはあるでしょうし、反対に何かを終えてほっとした後は、どんな素朴な食べ物であっても究極のごちそうと思えるでしょう。

 人生には常に新しい展開があり、予想もつかない出来事が日々起こります。それでも私たちは生きていくために、それこそ元気になるために、何かを食べます。勝利の味もあれば、敗北の味もあり、不安とおそれの味もあれば、心からの安心の味もあります。状況によって味は変わり、また逆に、味によって自分の状態を推しはかることもできます。忙しい日々はどうしようもなく続いていきますが、自分にせめて一杯のおいしいお茶をいれる余裕だけは持ちたいものです。そしてもし可能なら、隣の人にもいれてあげられる気持ちの広さも持っておきたいものですね。

お問い合わせ
滋賀県心の教育相談センター 滋賀県野洲市北桜(滋賀県総合教育センター内)
電話番号:077-586-8125
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