文字サイズ

2021年度(令和3年度)「ココロさんの ひとりごと」

コラム「ココロさんのひとりごと」

それぞれのコラムは、縮小画像で紹介しています。ぜひ、PDFで拡大してご覧ください。

No.21(2022年2月)大切なことに立ち返ってみる

ひとりごとNo.21

 最近観たドラマに、こんなものがありました。主人公は30歳男性で、5歳年上の自閉症の兄を幼い頃から世話してきた弟です。彼は、兄の世話や貧しい暮らし、過酷な労働のため、自分の人生を諦めていました。物語は、この主人公が、ある女性と出会い、心を通わせていくというものですが、主人公にとってはじめはお荷物に感じられた兄の存在が、とても大事なものに変化していきます。

 この兄は、好きなものは好き、ルールを守る、間違っていることは間違っていると言う、「空気を読む」ということはしない、という人です。「自分のことは自分でする」「けんかはしない」「兄は弟を守るもの」といったことをしっかりと守っています。まわりの人は「もし、こうなったらどうしよう」とか「もしかしたら、相手はこう思っているかもしれない」とか「きっと、だめに決まっている」と思って、誤解したり、もどかしい行動をとったりしてしまいます。そんな時、兄は、幼い頃から言われてきた『大切なこと』に基づいて、ストレートな発言をしたり、シンプルな行動をとったりします。弟はその姿を見て、気づかされ、救われ、そして「自分は兄に守られて生きてきたのだ」と感じるまでになります。

 私たちも、時には、このドラマの兄のように、基本に立ち返り、物事をまっすぐにシンプルに見てみてはどうでしょう。

 日々の生活の中でも、考えすぎたり心配しすぎたりして、苦しくなることは多いと思います。「空気を読む」と言っても、相手の心が完全に読めるわけではありません。相手の気持ちを考えることは大切ですが、読み取った内容が必ずしも合っているとは限りません。SNS時代やコロナ禍の影響によって、生身のふれあいや衝突が減少すればなおさら、憶測や誤解が修正される機会がないままになってしまいます。

 不登校になった時に「まわりの目が気になる」というのはよくあることですが、これも「きっとこう思われているはず」という本人の憶測や誤解がどんどん膨れ上がっている場合があります。家族も「学校に行けないなんて、将来社会でやっていけないのではないか」と先のことを心配してしまいがちです。

 まわりの目や先のことが心配になってしまうそんな時は、今、自分の目の前にあることにしっかりと向き合い、できることは何かに焦点を当ててみてはどうでしょう。そうして、まずは「やってみようと決めたこと」に集中することによって、少しずつ前に進めるかもしれません。

 また、渦中にいると、今、自分にとって大切なことが何なのか、わからなくなることも多いです。そんな時は、支援してくれる人や相談機関を見つけ、話をしてみてはどうでしょう。思いを聞いてもらうことで、憶測や誤解に気づき不安が軽減できるかもしれません。

当センターに相談に来られた時には、複雑な問題を一緒に整理して考えていけたらと思います。

No.20(2021年11月)関係が良くなる会話

関係が良くなる会話についてちょっと考えてみたいと思います。
思春期の子どもは、一人前のように見えてもまだまだ未発達な部分もあります。自立には、時間がかかります。子どもを理解し尊重しようとすることで、親子関係が良くなり、コミュニケーションの質も変わってくるのではないでしょうか。
関係が良くなる会話を心がけ、良好な家族のコミュニケーションがとれるようになるといいですね。

緊急事態宣言も解除され、以前のような日常生活が徐々に戻りつつあります。長らくの「ステイホーム」で、家族が一緒にいる機会も多くなり、親子で会話することが多かったでしょう。

当センターで相談をお受けしていると、保護者の方から、「子どもが全然話をしてくれない。何を考えているかわからない。」「子どもに話しかけても無視される。」「『別に』という返事だけが返ってくる。」など、うまくコミュニケーションがとれないというお話を聞くことがよくあります。思春期の頃は、特に難しいと感じておられるのではないでしょうか。そこで、関係が良くなる会話についてちょっと考えてみたいと思います。

思春期になると、子どもは親とは違う自分なりの考えを持ち始め、自分の価値観に基づいて行動したいと思うようになります。この時期、親が子どもに「試験が近いから、勉強しなさい!」「ちゃんと学校へ行きなさい!」など、指示的で威圧的な言葉をかけてしまいがちです。親としては、これまでの経験や子どものためという思いからなのでしょう。しかし、子どもはなかなか親が思うようには行動してくれません。「はいはい。」と気の無い返事をされたり、黙って自室に閉じこもられたりなどすると、結局、親も子も良い気分にはなりません。

親が子どもにかけた言葉は、「勉強をしないあなたはダメ。」「学校へ行けていないあなたはダメ。」のように、子ども自身を否定するメッセージとして伝わってしまっているのです。

このメッセージを「大丈夫だよ。」と、子どもを尊重していることが伝わるように変えることはできないでしょうか。

子ども自身、親の期待に添いたいと思っているけれど、うまく行動できないので、苦しさや不安を感じているのかもしれません。親が子に、「苦しいんだね。」「不安なんだね。」と共感することで子どもは安心します。新しいことやしんどい事にも取り組んでみようという気持ちになるためには、安心感がベースになくてはなりません。これは大人も一緒ではないでしょうか。

思春期の子どもは、一人前のように見えてもまだまだ未発達な部分もあります。自立には、時間がかかります。子どもを理解し尊重しようとすることで、親子関係が良くなり、コミュニケーションの質も変わってくるのではないでしょうか。

「そうは言っても心配だ・・・。」と思われる方もおられるかと思います。そのような時は、信頼できる人に話したり、各種の相談機関をご利用されたりすることも良いでしょう。大人も自分自身を大切にして、リフレッシュすることをおすすめします。

関係が良くなる会話を心がけ、良好な家族のコミュニケーションがとれるようになるといいですね。

No.19(2021年9月) 楽しいことが見つけにくい時に・・・

楽しいことが見つけにくい時に

夏休みは、楽しむことができましたか? 1つでも2つでも楽しかったことがあったらいいなあと思います。しかし新型コロナ感染症対策に伴う多様な制約によって、今年もやりたいことを我慢した人も多かったのではないでしょうか。そんな夏休みも終わり、2学期が始まりました。

最近では、新型コロナウイルスの変異株が蔓延してきて、学校内での感染症予防も今一度見直され、より丁寧な行動が求められる状況になっています。学校によってはリモート学習の人もいるかもしれません。学校に行かない分、体力的負担はないかもしれませんが、場所の移動がないので、気分の切り替えが難しくなりがちです。

日常生活のほとんどすべての行動に何らかの制約が生じてしまう環境では、知らず知らず、小さなストレスが積み重なってしまいがちです。そのような状況下では、大人でも子どもでも、体や気持ちの調子が崩れやすくなりがちです。

どうか毎日の生活のなかで、感染症対策をとりつつ、自分を楽しませてあげる「ご褒美の時間」を意識して作ってください。自分で自分を満足させられれば、ほかの人にも優しい気持ちで接することができます。このストレスフルな日常生活を、みんなで協力して少しでも和やかに乗り越えられたらいいですね。

新型コロナ感染症が流行するまでに行っていた自分のストレス解消法が実践しにくくなった人や、自分が何をしたら気持ちが晴れるのかわからくなった人がいるかもしれません。以前ほど楽しくなくなったなあと感じている人や、飽きてきたという人もいるでしょう。

そんな時には、興味あるなしに関係なく、人がやっている趣味をいろいろ試してみることをお勧めします。やってみると意外とはまることがあります。すでに好きなことがあるという人も、新しいことにチャレンジしてみることをお勧めします。1つのことに没頭して、それが上達すると楽しいものです。自分が楽しめる方法を複数もっておくと、どんな状況になってもより健康に過ごせる力につながります。

また、楽しい活動であっても、最初に、終わる時間を決めて活動するように心がけてはみてはどうでしょう。難しく感じるかもしれませんが、テーマパークの閉園時間のように終わりを意識することで、集中して楽しめる自分に気付けるでしょう。

何をやっても疲れる時には、体も脳も疲弊しているのでまずは休養をとることを第1に考えてください。

その時に、とても大事なのが食事の栄養バランスです。基礎体力を保つことにもつながりますが、食事からとる栄養素が脳内物質の元ともなり、ホルモンバランスにも影響し、意欲や集中、睡眠、気持ちの安定などにつながります。

食べられない、寝られないなど、しっかりと休養できない場合は、かかりつけのお医者さんに相談してみましょう。また、つらい気持ちやしんどさを表に出すという意味で、誰かに話をすることもいいでしょう。当センターの電話相談もお役に立てたらいいなと思います。

休息すれば、必ず何か楽しめるようになる日が来ます。だらだらと過ごす日も、めいっぱい楽しむ日もどちらも大切です。

焦らず、あきらめず、自分のペースで一日一日を過ごしていきましょう。

No.18(2021年7月) 「自己理解」ってなんでしょう?

「自己理解」ってなんでしょう?

「自己理解」という言葉をよく耳にしませんか?子どもたちにも「自己理解」を促す取組みが進んでいます。

「自己理解」とは、『自分自身の性格や興味・関心、考え方を知っていること』『好きなこと・嫌いなこと、得意・不得意、強み・弱みを知っていること』『物事に向かう意欲をコントロールするために必要なことを知っていること』ではないかと思います。

自分の価値観や興味・関心、「強み」に気づくには、今の自分だけでなく、これまでの自分を思い出してみましょう。きっと、大切にしていることや好きなことを、手放さないで持ち続けているのではありませんか。そしてそこには、自分だけの「強み」も隠れているはずです。進路・職業選択をするにあたっては、これからの時代の求めに応じた選択をすることも大切ですが、同時に、自分の「強み」を生かせるように考えてみませんか?

「あるべき姿」や「なるはずの姿」として理想を追うだけでは、現実離れした期待が膨らんでしまい、不満や不安、焦りやイライラが現れます。そんな時は、あなたが信頼している人と話をすることで、客観的な意見を聞くことができるかもしれません。そうすることで、現実を見つめ、自分の「強み」を生かす新たな方向性を知るチャンスが得られるのではないでしょうか。

「自己理解」とは、他者と比較して自分の「できない部分」を見ることではありません。夢をあきらめるのではなく、自分特有の「強み」を知ることで、自分の新たな可能性に気づくことだと思います。

さて、自分の「強み」は、自分に興味があって得意なことにつながっています。積み重ねることや続けることで、成果も上がってくるでしょう。社会や学校などにおいても努力や継続は求められることです。しかしながら、自分のペースを超えて活動すると、体だけでなく、精神的にも無理が生じます。自分では疲れに気づかない場合もあります。適度に休息をとることは、次の意欲にもつながりますし、心身の健康を維持することができます。「これくらいは大丈夫」と思いがちですが、周囲からの声に耳を傾けてみてください。そして、自分で気づきにくいことは、家族や友だち、職場の仲間などに教えてもらいましょう。

「自己理解」のためには、まずは、自己分析をすることと、信頼できる周囲の人から意見を聴くことから始めてみましょう。

また、自分では気づきにくい心身の健康管理については、信頼できる周囲の人を頼ることを忘れないでください。

No.17(2021年5月) 小さい頃、何が好きでしたか?

ココロさんのひとりごと
「小さい頃、何が好きでしたか?」
2021年5月No.17

 「小さい頃、何が好きでしたか?」「どんな遊びをしていましたか?」と、面談の際にお聞きすることが時々あります。ブロックやお絵描き、外遊び、あるいは何かをコレクションすること…などなど、人によって様々なお答えがあります。私たちは生まれてから数ヶ月すると、ぼんやりと周りを認識するようになり、だんだんと、何かと何かの区別が可能になっていきます。そしてその過程で、ひとつずつの事物には固有の特徴や意味があり、何かと何かは交換不可能であることも学んでいきます。そんな中で、自分の感覚にぴったりと合う何かに出会っていくこと、多くの事物の中から自分にとって良いものを選んでいくことは、とてもわくわくすることであり、幸せを感じる瞬間に違いないと思うのです。
大きくなるにつれ、しないといけないから、流行っているから、という理由ですることが増えていきますが、なんとなく疲れた時や迷走しているなあと感じる時は、元々本当に好きだったことに立ち返るのも、ひとつではないかなと思います。もちろん当時より自分は成長しているので、興味の形は少し変わるかもしれませんが、きっと好きだったことに取り組んでいる時の自分は、高揚感とリラックスを同時に感じていると思うのです。
例えば、お絵描きが大好きだった人は、色や形への感覚が鋭く、インテリアやファッションに目覚めるかもしれません。泥団子づくりが大好きだった人は、無から造形する喜びを知っている人であり、何かをつくり、育てることに興味があるのかもしれません。絵本が大好きだった人にとって、やはり心の友は文字であり、何かを読むうちに心落ち着く感覚があるのかもしれません。
好きなものに取り組み、好きなものを語る時、その人の心は動きます。面談の中でも、好きなものの話題については、学校についての話題の時とはまた違う雰囲気でお話されるので、こちらも、「ああ、こんな表情をされるのだなあ。本当はこういう人なのだなあ。」と実感しながらお聴きすることになります。おそらく、その人が人生の最初の方で選んでいる大好きなことというのは、生まれつき、自分の心身になじむもの、心地よいと感じるものなのでしょう。また、幼児期に触れているものなので、ゲームやインターネットとは違う、素朴で自然なものが多いといえます。
自分は何を好み、何を志向するのか。案外、それは人生の最初の頃に示されていたりするものです。自分がほっとできる小さな楽しみをもつこと、そして、そのための場と時間を確保することは、人生を生き抜く上でとても助けになるものです。
まだまだ続くステイホームの日々の中で、好きなものに触れていける工夫を続けていただければと思います。
 

お問い合わせ
滋賀県心の教育相談センター 滋賀県野洲市北桜(滋賀県総合教育センター内)
電話番号:077-586-8125
Adobe Readerのダウンロードページへ(別ウィンドウ)

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。