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令和5年度第4回滋賀県総合教育会議の開催結果

開催日時

 令和5年11月13日(月曜日)午前10時から12時まで

開催場所

 県庁北新館5-B会議室(大津市京町四丁目1番1号)

出席者

 知事、副知事、教育長、教育委員会委員

議題

(議題1)次期「滋賀の教育大綱」について

(議題2)幼保小連携の推進について

(議題3)高等専門学校の設置を契機とした理系人材の育成・裾野拡大について

会議録

(福永教育長)

 本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。

 定刻となりましたので、ただいまから「令和5年度第4回滋賀県総合教育会議」を開会いたします。

 本日の出席者につきましては、お手元の「出席者名簿」および「配席図」の配布により、紹介に代えさせていただきます。

 なお、三日月知事および窪田委員におかれましてはオンラインで御出席いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

 また、本日の会議は、会場での傍聴と併せて、ウェブ会議システムを活用してオンラインでも視聴をいただいておりますので、御承知おきください。

 それでは開会にあたりまして、知事から御挨拶をお願いいたします。

 

(三日月知事)

 本日は伊吹山の初冠雪があり、随分寒くなりました。御出席いただきました皆様におかれましては、御参加いただきありがとうございます。また、平素それぞれの立場で滋賀県の教育行政等の分野において御尽力をいただいていることに敬意を表し、様々な御指導、御協力をいただいていることに感謝申し上げます。

 本日は議題が多いですので、一点に絞り、申し上げます。

 先週末、福永教育長と共に滋賀県フリースクール等連絡協議会の皆様、登校拒否・不登校問題滋賀県連絡協議会の皆様と意見交換を行いました。昨今、滋賀の不登校を巡る事々が注目されているところですが、大杉副知事におかれては、私の命を受けて、様々な団体、現場にお伺いしていただいていたり、先進事例の調査などもしていたいだいているところです。副知事はじめ、総務部長とも共有しておりますが、是非、来年度の施策や予算の中で不登校に関しても何らか打ち出していこう、そして、何年でどこまでいくのかということを示していこうということを申し上げているところですので、教育委員会を中心に様々な施策づくりに取り組んでいただくようにお願いいたします。

 この週末の場でも貴重な御示唆をいただいたところでございますが、私からは三点申し上げました。一つ目は子ども達一人ひとりの育ち、学び、悩みに寄り添う必要性、二つ目は不登校という選択をする子ども達が増えていることから、学校というものの在り方ややり方も含め、問われていることがあるのではないかということ、三つ目はそのような子どもと社会の関わり、私達自治体はもちろん、国、もしくは大人、その向き合い方も見つめ直すことが重要ではないかと捉えております。今、策定中の「しがの学びの保障プラン」にもそのような議論や検討、意見交換を反映させていきたいと思いますし、不登校の問題だけにフォーカスするのではなく、そのこと自体が滋賀の教育全体の底上げになっていくという観点に立った取組や打ち出しが必要だと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 本日の議論が今後に繋がる実りあるものになることを期待し、私からの言葉に代えさせていただきます。

 よろしくお願いいたします。

(福永教育長)

 ありがとうございました。

 それでは早速でございますが、本日の議題に進んで参りたいと思います。議題1として、次期「滋賀の教育大綱」について御議論いただきたいと思います。昨年の5月以降、長きにわたり、総合教育会議において次期「滋賀の教育大綱」の策定に向けて御協議いただいてまいりました。いよいよ本日は最終案について御議論いただきたいと考えております。

 資料につきましてはお手元の資料1-1から1-3までを用意しておりますが、内容につきましては前回の総合教育会議でお示しした案から一部数値の修正や文言の修正を行ったということで、大枠は変わっていませんので、本日は説明を省略させていただきます。

 ただし、本日の案におきましては、資料1-3の2枚目から3枚目になりますが、大綱の冒頭部分に教育大綱の策定にあたっての知事の思いを記した前文を掲載したところでございます。

 この前文におきまして、知事が教育大綱の策定にあたり、込められた思いをお聞かせいただきたいと思います。知事、お願いできますでしょうか。

 

(三日月知事)

 大綱に込めた思いとしていくつか申し上げます。大事にしたい言葉としては人づくりや幸せ育むというところはこだわりました。

また、三つの柱である、夢と生きる力を育む、学びの基盤を支える、みんなで学びに関わる、この部分は変えずに、具体の取組を充実させていく方向で取り組んでいきたいと思っております。

 中段以降に書いております、豊かな自然の中で、歴史文化の上で、地域社会の中で学びを大切にすることや、学力の基礎になる読み解く力、学ぶ力を向上させる取組、個別最適な学び、協働的な学びを一体的に進めることで高める取組については、これまで通り、あるいはこれまで以上に進めていきたいと思っております。今の大綱の中で取り組み始めた、子どもの笑顔は大人の笑顔やゆとりからといった教職員の多忙化の解消、安全・安心、GIGAスクールをはじめとするDXの推進については、是非、次期「滋賀の教育大綱」の中で強力に進めていきたいと思っております。

 この間、コロナ禍がありました。この局面は私自身考えること、感じることが多々ありました。その中で出てきたのが「子ども・子ども・子ども」です。一人ひとりの存在、社会の一員としての存在、そして未来の希望としての存在、社会全体で子どもの育ちや学びをつくり、支えていくことを強く呼びかけていきたいと思います。

 また、分かった、できたということも大事にしたいですが、分からない、助けて欲しいということが気軽に言える教室、職場、社会を作っていきたいという気持ちは特に強く込めたつもりです。それらを愛情を持って包み込む、向かい合う、そのようなことも是非大事にしていければと思います。

 引き続き、「人は人の中で人になるのだ」という思いを皆さんにお届けするとともに、繋がりや関わりを大事に、社会の中で生涯を通じた学びを充実させていくことと同時に、困難な環境にある人の学びの支援なども、この大綱を機に政策として皆さんにお示しできればと思いますので、大綱を絵に描いた餅に終わらせることなく、具体の施策を作り、進めることを重ねて強調させていただき、私の思いとして皆さんにお届けしたいと思います。

(福永教育長)

 ありがとうございました。

 それでは、今の知事の御発言も含めまして、今回の「滋賀の教育大綱」につきまして皆様方から御意見や、御感想、あるいは御質問等がございましたら伺いたいと思いますがいかがでしょうか。

 

(塚本委員)

 大綱の策定にあたってという知事の文章を読ませていただき、よくぞ言っていただいたという思いを持ちました。この大綱の中身は、個別の施策も詳しく語られながら、言葉の端々には社会の在り方を挙げていただいているのですが、知事の言葉として、例えば、弱さも含めて大事にされる社会や、どんな社会を目指すのかが語られるということが大切ではないかと思いました。

そのような中で、私たちが創っていくべき社会、当然、ここでは教育に関して述べられているのですが、次の時代、社会、世の中をどのようなものに創っていくのかという大きな理想を掲げていくことが大事ではないかと感じ、読ませていただいていますので、良い文章を作っていただいたと思っています。ありがとうございました。

 

(野村委員)

 私はこの大綱に関わらせていただくのが、二度目となりますが、子どもたちを取り巻く社会が色々と変化していく中で、人として、切れ目なく子どもたちを支えていく、そしてそれが学校だけでなく、色々な所で検討され、学校現場としてするべきところ、また地域や家庭でするべきところを、子どもたちを真ん中に置いて進んでいくことで、住み良い社会に、そして子どもたちの成長に繋がるような展開にしていけるようになればと感じさせていただきました。教育大綱の策定に御尽力いただきましてありがとうございます。

(土井委員)

 知事に作成していただいて、大変良い前文だと思います。計画はどうしても色々な事柄を取り込んでいますので、全体を通じて読まないとなかなか分かりにくい面もあるのですが、このように何が大事かということを最初にまとめていただいたのは大変良いことだと思っています。

読ませていただいて感じたことは二点です。一つは先ほど知事から何が重点かということを伺いましたが、知事自身、人とは何か、人らしくあるとはどういうことなのかをお考えになりたい、あるいは、それを考えられるような県にしていきたいということをおっしゃっているのだと思いました。一方で自然の環境を大事にするということもありますし、他方でAIを含めたデジタル・トランスフォーメーションが進んでいく中で、人が人であるために大事なことは何なのかということを考える必要がありますので、それらを実現できるような教育にしていくことが大切だと思います。

 二点目は、分かった、できただけではなく、分からない、助けてと言えるような環境を重視したいということ、これも特に大事だと思います。私の子どもの頃を振り返ると、分かりたいと思っていることが大事なのだろうと思います。それがうまく実現できれば、分かったということになりますし、うまく実現できなければ、分からないからどうしたらいか良いのかということになります。その意味で、分かりたいと思う、あるいは、何かを実現したいと思っている子ども達の気持ちを大事にできる学校や社会、それを実現していくことが大事だと思いますので、この前文の趣旨が実現出来ればと思います。

 

(窪田委員)

 最初に知事の話にもありましたが、改めて「子ども・子ども・子ども」ということで、子ども達が意見を言える権利を持っていたり、意見を聞き取ってもらえる権利を持っている、権利主体者としての子どもを大事にしていく県の教育を作っていくのだという県のメッセージとして受け取らせていただきましたので、この大綱で県の教育をより良く豊かにしていけたら良いと感じております。

 

(福永教育長)

 ありがとうございます。教育委員の皆さんから御意見や感想を賜りましたが、知事からコメント等ありますでしょうか。

 

(三日月知事)

 委員の皆様からいただいたコメントも含め、この大綱と計画や施策に反映できるように、一緒に頑張っていきたいと思います。ありがとうございます。

 

(福永教育長)

 ありがとうございます。本日の協議も含め、教育大綱の策定に向けて取り組んでまいりたいと思います。議題1につきましては以上とさせていただきます。

 続きまして、議題2「幼保小連携の推進について」に移ります。ここで本議題のゲストの皆様におかれましては、御着席いただきますようお願いいたします。

 

 本日は現場で実践されている方々から取組をお聞かせいただき、意見交換をさせていただきたいと考えております。日野町立南日都佐小学校から山添美実校長、植田美郷教諭、日野町立南日都佐幼稚園から幸野雅恵園長、日野町立保育園こばと園から正木朋美園長にお越しいただいております。どうぞ皆さまよろしくお願いいたします。

 それでは、議事を進めさせていただきますが、まずは教育委員会事務局から説明させていただきます。

 

(澤幼小中教育課長)

 滋賀県における幼保小接続の取組について説明させていただきます。

 資料2-1を御覧下さい。学習指導要領等におきましては、育成を目指す資質・能力を子どもたちが身に付けるよう、教育施設も含めた校種間の系統的な教育を見据えた円滑な接続の重要性が示されているところでございます。

 本県の幼保小の接続の現状といたしましては、これまで保育・授業の相互参観や、園児・児童の交流行事、合同の研修会等が実施されてきたところです。一方、施設類型の異なる幼稚園、保育所、認定こども園、小学校、それぞれの保育・教育の相互理解や、幼児教育で培われた力を小学校で存分に発揮できるような教育課程の編成や実施には課題があったところです。

 そのような中、幼保小の接続に係る事業としまして、本県では平成27年度から「学びに向かう力推進事業」として、指定の小学校区において「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を手がかりに、校種間の円滑な接続を意識した系統的な指導や教育課程の編成・実施に取り組む中で、保育・教育の質の向上を目指してまいりました。令和2年度からは小学校に加配の先生を配置し、週15時間程度、小学校加配教員が保育に参画することによって幼児教育についての理解を深め、研究に活かしていただいています。

 また令和4年度からは、文部科学省の事業である「幼保小の架け橋プログラム事業」の委託を受け、公私、類型を問わない幼保小の円滑な接続を目指し、取組を進めています。5歳児の4月から一年生の3月までの二年間、いわゆる「架け橋期」における接続カリキュラムの作成、実践、検証を通して、保育・教育の充実を図ります。「学びに向かう力推進事業」の指定校・園についても、昨年度より架け橋期のカリキュラムを作成いただいています。

 続きまして、幼児教育センターについて説明します。県内全ての幼児教育施設で、より質の高い保育・教育の実施、各中学校区における幼保小接続の充実を図るため、令和6年4月に「滋賀県幼児教育センター」の開設を計画しておりまして、現在準備を進めているところです。教育委員会事務局幼小中教育課と健康医療福祉部子ども・青少年局、総務部私学・県立大学振興課が連携し、各種取組を実施するとともに、市町教育委員会、市町長部局や公私立の幼児教育・保育関係団体と緊密に連携してネットワークを構築します。

 主な取組としましては、県幼児教育センターと市町が連携し、研修の体系化や内容の充実を図ることや、各幼児教育施設、小学校および市町幼児教育主管課・教育委員会等に対して、幼児教育アドバイザーが指導・助言する体制づくりを進めること、施設類型を問わず、切れ目なく質の高い学びへ接続できるよう、中学校区における幼保小の円滑な接続を一層推進すること、また幼児教育にかかる調査・研究を引き続き実施していきたいと考えております。

 本日は令和4年度より「学びに向かう力推進事業」の指定を受け、取組を進めていただいております、日野町立南比都佐小学校、南比都佐幼稚園、保育所こばと園の先生方に、幼保小接続の取組の御報告をお願いしております。事務局の説明は以上でございます。

(福永教育長)

 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、お忙しい中お越しいただきましたゲストの皆様より、取組について御発表いただきたいと思います。まず南比都佐小学校から、順次御説明をよろしくお願いいたします。

(日野町立南比都佐小学校植田教諭)

 南比都佐小学校幼小連携加配の植田美郷です。よろしくお願いいたします。

 資料を順に説明させていただきたいと思います。令和4年度、令和5年度の二年間にわたって「学びに向かう力推進事業」の取組をさせていただいております。南比都佐小学校と南比都佐幼稚園と日野町立こばと園の三つの校園の合同テーマとしては、「自分の思いや考えを表現できる環境づくりや支援の在り方~『育ちあう』子どもから『学び合う』子どもへ~」をテーマに、研究を進めさせていただいております。「支援」は小学校でもよく使う言葉ですが、「環境づくり」というのは保育園の先生方がよく使われる言葉で、小学校に取り入れる思いでテーマ設定させていただいています。取組の報告といたしまして、研究の目的や方法、実践報告、取組の成果、課題から見える今後の目指す姿について、御説明させていただきます。

 まず研究の目的についてです。保育園や幼稚園の保育や子どもの育ちをきちんと小学校の教師、小学校側が受け取ること、子どもたちのどのような力をどのように育てようとしているのかをしっかり理解し、育ちや経験を十分に知った上で、その子どもたちを受け取る小学校がどのように指導していくのかということを考えることが研究の目的です。

 次に方法です。保育園、幼稚園と小学校の違いをはっきりさせること、そしてその違いを埋めたり、うまく使ったりするような方法を見つけること、違いを知った上で、互いに理解し合い、お互いの指導と保育の良いところを学び合うこと、子どもたちの育ちと学び、または教師の指導を無理なく円滑なものにすること、この四つの方法で、子どもたちが生き生きと主体的に学ぶ姿が見られる、主体的・対話的で深い学びにも繋がるのではないかと考え研究しております。

 取組の実践報告としましては、お互いに知ること、お互いに親しむこと、繋がりをしっかり感じること、また、二年目の研究となりますので、日野町全体で広げていくことを目的に進めています。

 「互いに知る」ということですが、小学校教諭全員が園内研究会に参加させていただいています。管理職等は保育園や幼稚園を訪問する機会がある一方で、担任教師等はなかなか園の研究に参加させていただくことができませんでした。しかし、担任こそ見に行くべきということで、現在は参加することができています。

また、保育園・幼稚園の先生方にも校内研究会に参加していただき、「このような場面では、園、保育の場では、このような声掛けをしていますよ。」「このような進め方をしてみたらどうですか。」などのようなアドバイスをいただいたりしています。園内研究の中でも、「小学校ではこういう学びをしています。」ということを伝えることによって、保育の向上や授業の向上に繋がっています。

 次のスライドにある「互いに親しむ」は、人だけではなく、場所も大切であると考え、図書室を開放させていただいています。南比都佐小学校と南比都佐幼稚園は併設しておりますので、図書室の利用といたしまして、幼稚園の子どもたちの図書カードも作成させていただき、貸し出しを行っています。入学してきた子ども達が安心して学校で学べる一つの要素となっています。

これまでより特に活発に行われてきたのが、加配が学習や保育をサポートするということです。小学校の骸骨を見に来て、自分たちのお化け屋敷に活かしたり、また、生活科で捕まえたザリガニを何とか自分たちの力で飼いたいということで、幼稚園の先生方に御協力していただいたこともあります。

 南比都佐小学校には学校林があります。学校林で幼稚園の子たちと一緒に遊ぶためにはどのような計画が必要なのか、幼稚園の子たちはどのような遊びが好きなのかなどを小学校三年生の子どもたちが一生懸命考え、計画、実施を行い、主体的に活動しています。

 小学校二年生の国語においては幼稚園との関わりがあり、「ペープサートを見せたい」「幼稚園の子に分かりやすくするためにはどうしたら良いか」ということを子どもたちで話し合いながら授業を進めたりもしました。

 「つながりを感じる」という意味では授業体験会も実施し、体育や図工など共通点の多い教科において、5歳児の園児を招待し、授業を一緒に受けていただいています。T1は小学校の教諭が行い、T2は保育園の先生に入っていただくのですが、子どもたちへの声掛け、子どもたちへの支援の在り方を教師自身も学べる機会になっています。

 滋賀県から周知されている「学びのサイクルデザインシート」を活用し、小学校でも子どもたちの思考や発言から授業を組み立てていくということにチャレンジしています。

さらに、指導案検討会も行っています。以前行った指導案検討会では、5歳の子ども達の何を育てたいのか、小学校一年生の子ども達の何を育てたいのかということを主に話し合いながら、保幼の先生方から「もう一度きちんと遊ぶ時間を取った方が、子どもたちの『よかった。』『よりよくなった。』と実感させることができるのではないか。」というアドバイスをいただいたり、小学校の教師からは「本当に自分の好きな遊びだけで良いのか、協同性は育まれるのか。」というような話し合いをしました。

 また、週に一回、幼稚園に加配教諭が出向かせてもらっているのですが、幼稚園で使われている教材や、小学校で使われている教科書の共通点等を探しながら、小学校と幼稚園に発信しています。幼稚園で経験したことが分かっている状態で小学校の授業を組み立てることが出来ると、先生の声掛けも変わり、ゼロからのスタートではないということが感じられます。

 また、私が保育園へ出向いて気付いたことや、小学校と幼稚園の繋がりや違い等をまとめた通信も発行させていただいています。昨年度は保育園や幼稚園のすごいところを中心にまとめ、本校や近くの小学校にも配布させていただきました。今年度は「つながる」ということで、小学校と保幼の教育がどのように繋がっていくのかをより細かく伝えさせていただいています。

 また、「町全体へ広がる取組」といたしましては、「夏の合同研修会」という形で日野町全体の先生方と幼保小連携についてみんなで話し合う機会を設けました。あまり興味がなかった先生方も、保幼の先生方と直接話すことによって勉強になったとおっしゃっていました。また保幼の先生方も、自分たちが行っている保育、どのように子どもを育てているかということを小学校教諭に説明できた良い機会だったとおっしゃっていました。また、他校園にも私が出向いて小学校の様子等をお伝えしたりし、活動しております。

 「取組の成果」ですが、「教師の意識の変化」がこの研究の取組の一番の成果だと思っています。保育園や幼稚園、小学校の様子を伝え合うだけでなく、お互いに見習うべきところが沢山あるのだということを、南比都佐小学校区の保育園、幼稚園、小学校の教師が気付けたことが一番の大きな成果だと感じています。保幼の先生方は、きめ細やかな支援や声掛け、一人ひとりの育ちの捉え方、子どもの思考や発想からの発展がとても上手に行われていますし、小学校教諭は、活動を発展させようとする支援や声掛け、また、小学校ではICTが進んでいますので、ICTの活用の仕方や明確なめあてをもった実践等、お互いに見習うべきところが沢山あるということに気付きました。

成果の二つ目は、幼稚園、保育園、小学校で接続期カリキュラムを作成しており、保育園、幼稚園でどのように子ども達が成長してきたのか、小学校に入学してからはどのように成長していくのかということを二年間を見通して、お互いに実践にあたることも出来ています。また、保幼の時間軸と小学校の時間軸に差があるため、入学当初は45分を15分刻みにしながら学校生活を送るという工夫も今年度からしております。

成果の三つ目は、子どもも教師も安心できる学校づくりということで、子ども達は、知っている教師がおり、行ったことのある場所への入学なので、安心して来てくれています。教師としても分からないことや困ったことなどがあれば保幼の先生方に聞いたり、小学校の先生に相談することができるため、安心して子ども達に関わることが出来ています。また、幼稚園の保護者の方からも、体験の機会や小学生が幼稚園に遊びに行く機会が増えたので、入学に関して安心しているとのお声もいただいております。

最後に課題から見る今後の目指す姿についてです。加配教員がいなくても繋がりあえる環境ということで、校区内の公開保育や研究授業への参加機会を確保していったり、連携担当者が意識を持ってしっかり繋いでいくということが大事だと思っています。また、日野町で実施しております、命が宿ってから義務教育終了までの16年プロジェクトということで、各校園での接続期カリキュラムの作成をお願いしたいと思っております。意識的に互いを活用するということで、自分たちの保育や授業に自信を持ちながらも、互いに協力しながら子ども達が成長していけるように取り組んでいきたいと思っております。

(福永教育長)

 植田先生どうもありがとうございました。

折角の機会ですので、幼稚園の幸野園長、保育所の正木園長からも、取組等を御発言願います。

 

(日野町立南比都佐幼稚園幸野園長)

 二年間の取組の中で、小学校の先生方に幼稚園での活動を知っていただけたということが大変大きいです。5歳児が3月にはこのような姿であって、入学してくるのだということを小学校の先生に知っていただき、4月は45分授業の中で無理のない進め方をしていただくというように変えていただいたことで、子ども達にとっては安心で、学校が楽しい、好きだというところに繋がっていったと思います。幼稚園の職員も授業の様子が分かり、小学校の先生方も子ども達の様子が分かる取組になったということは、すごい成果だと思います。

 

(日野町立保育所こばと園正木園長)

 当園は三つの小学校区の子ども達が登園しておりますが、今回そのうちの一つである南比都佐小学校と交流させていただいた中で、小学校の先生に現場の保育を一緒にしていただきながら、保育士がどのように子ども達に支援をしているのか、また、どのような環境で子ども達が育っているかということを見ていただき、それを通信や学校の先生方にお伝えいただいたということが、小学校の授業にも繋がり、大変大きいと感じております。

 また、職員も顔を合わせて交流させていただく機会がありましたので、このような先生がこういう授業をしてくださるのだということや、反対に、園の雰囲気を感じていただいたりと、職員にとっても子どもにとっても大変良い交流の機会になっていると思いました。

他の学校区の子ども達もおりますので、日野町が進めている事業が進むということは保育所にとっても大変ありがたいことですし、気兼ねなく小学校の先生が保育所を訪れて下さったり、こちらから訪れたりすることが出来る関係になると良いと思っております。

 

(福永教育長)

 ありがとうございました。

 それではゲストに御発表いただきましたこと、また、先ほど事務局からありました説明も含め、御意見や御質問等ありましたら、よろしくお願いします。

(塚本委員)

 貴重なお話を聞かせていただきました。ありがとうございました。

幼保小連携に関して、子ども達にとって次のステップへの準備ということも大切なのですが、指導案の検討の段階で今の年齢に何が必要なのかということを加えていただいていることに大変安心しました。次への準備ということに終わらず、年齢それぞれに応じた、今何を大事にしないといけないのかという、現場の先生方がお子さん一人ひとりに寄り添っていただいている姿も分かりますし、すごく大切にしていただいているのだと感銘を受けました。

 一つ質問なのですが、45分の学校スケジュールを15分刻みで進めているということを御発表されていましたが、具体的にどのようなことをされているのか、お教えいただきたいです。

 

(日野町立南比都佐小学校植田教諭)

 15分ずつ授業を進めるというのではなく、45分を15分刻みにし、例えば国語科であれば、子どもの集中が持ちそうな内容については15分×2の30分間を授業、残りの15分はしりとり遊びをするというような、子ども達にとって楽しめるような内容にするようにしております。45分間ずっと椅子に座りながら授業を受けるということは一年生の後半にもっていき、入学当初は、生活科における学校体験などの動く活動など、45分間持つような活動は45分間取ったり、字を書くというようなことは30分や15分と短くして時間を取らせていただいております。

 

(塚本委員)

 ありがとうございました。

 

(野村委員)

 御説明ありがとうございました。

 幼稚園や保育園の子ども達が小学校に入学し、いきなり授業に入っていくのではなく、徐々に慣れていけるような工夫をされているということで、子ども達にとっては安心して学校や授業に入っていくことができ、また、心の準備をして学校に行けると感じました。

 幼児期の子ども達は月齢によっても発達の違いがあると思います。それを小学校の先生が幼稚園の子ども達を見ながら把握した中で小学校に繋いでいただき、この子にはこのような支援や配慮が必要だということも見えると、一人ひとりに施される学習や支援も変わってくると思いますので、そのことをしっかり出来ているのは良いと思いました。

 以前ふれあい教育対談で守山小学校を訪れたのですが、小学校と幼児期を繋ぐとても良い取組を報告してくださいました。このような取組が県全体に広がり、幼児期と小学校が繋がっていけるような体制に繋がると良いと思います。

 一点質問があります。幼稚園の先生や小学校の先生方で検討会の時間をとっていただいていると思うのですが、先生方への御負担が通常授業に影響してくるのか、時間の取り方について教えてください。

(福永教育長)

 保育園や幼稚園、小学校において活動時間がそれぞれ決められており、情報交換をするような時間を取るのが厳しいのではないかという御意見もいただきます。人員を増やすのが良いということは感じておりますが、時間を作る上で何か工夫されていることはございますか。

 

(日野町立南比都佐小学校植田教諭)

 小学校から会議に出席するのは一名なのですが、子ども達が下校してからの時間に会議を設定させていただいております。

 

(福永教育長)

 幼稚園や小学校一年生の担任であれば午後の時間に余裕が出てきますが、保育所ですと子ども達がいる中でどのように時間を作っていらっしゃるのでしょうか。

 

(日野町立保育所こばと園正木園長)

 研究会などを学校が終わってからの15時に設定していただいており、なるべく私も出席させていただけたら良いのですが、朝7時半から夜7時まで保育をしておりますので、出来る限り5歳児の担任が出席し、話を持ち帰ってもらうようにしております。学校のように加配教員がいると良いのですが、ギリギリの状態で頑張っております。

 

(福永教育長)

 保育所の先生方は場合によっては夜まで保育をしてくださっているという現状を、本日出席している健康福祉部でも把握しておりますので、そのことも含めて検討を進めていくことが必要だと思っています。

 

(土井委員)

 貴重な御報告をありがとうございます。

 先ほど、こばと園の正木園長から、こばと園を卒園した子ども達は三つの小学校に行かれるというお話がありましたが、南比都佐小学校にはいくつの保育園や小学校から子ども達が入学してくるのか、また、南比都佐幼稚園からどれくらいの小学校に行かれるのかということと、小学校と幼稚園、保育所がどれくらいの距離にあるのかということを教えてください。

 

(日野町立南比都佐小学校山添校長)

 今年度は五つの幼稚園、保育園から入学しております。また南比都佐幼稚園は運動場を介して歩いて5分もかからない同じ敷地のようなところにありますが、こばと園は車で10分ほどの距離にあります。それでも近い距離であると感じております。

 

(土井委員)

 ありがとうございます。

 具体的にこの幼保小連携をする時に、子ども達を含めて連携していただくことは多いと思うのですが、小学校からすると多くの幼稚園や保育園からの受け入れがあり、幼稚園や保育園の方も多くの小学校に送り出してらっしゃると思いますので、時間的にも距離的にも難しい問題があると思います。その意味ではカリキュラムで繋げていただき、特定の幼稚園や保育所、小学校の間柄を超えて、この成果が導き出せているということは非常に良い取組をしていただいていると思いますし、先ほどのお話にありました、時間を意識したカリキュラム編成については、本日お越しいただいている小学校や幼稚園、保育所だけでなく、どこにおいても汎用性のある成果だと思いますので、このような形で成果をカリキュラムに反映していただけるとありがたいと思います。

 

(窪田委員)

 貴重な御報告ありがとうございました。規模感を教えていただきたいのですが、こばと園の年長さんの人数、そして南比都佐幼稚園の年長さんの人数、小学校は5つのところからということで、もう少し多いと思うのですが、一年生の人数をお聞きしたいです。

 

(日野町立南比都佐幼稚園幸野園長)

 南比都佐幼稚園の5歳児は7名です。

 

(日野町立保育所こばと園正木園長)

 こばと保育園は20名在籍しておりますが、先ほど申し上げたように小学校区が3つありますので、今の5歳児は南比都佐小学校区が5人、実際に当園が建っているところは必佐小学校区なのですが、必佐小学校へ行く子が11人、日野小学校へ行く子が4人です。

 

(日野町立南比都佐小学校植田教諭)

 南比都佐小学校は現在の一年生が15名で来年度は16名の予定です。

 

(窪田委員)

 ありがとうございます。

 小学校と幼稚園の先生は大変お忙しいと思いますが、お互いに行き来できたり、小学校の図書室を幼稚園の子たちが使えることは良いなと思いながら聞いておりました。先ほどのやり取りにもありましたが、こばと園は車で10分ほどかかるため、日常的に子ども達がアクセスすることが難しかったり、実際には他の幼稚園や保育園からも小学校に入学されるということですが、密接していなくてもカリキュラムの接続を通し、年長さんから一年生の二年間を丁寧な見通しを持って接続されている印象を受けました。御報告の中にもありましたが、一校二園で閉じてしまうのではなく、他の校区内においてや、町全体で共有できる場を作られていたり、今年度は町内全体でという話もありましたが、そのような形で町全体で子ども達を育んでいくことは大事な実践だと思いながら聞かせていただきました。

(福永教育長)

 ありがとうございます。

 大杉副知事からよろしくお願いします。

 

(大杉副知事)

 ありがとうございます。非常に充実した取組をしてくださっていますし、色々な学校や園で参考になる方法がいくつもあると思います。

特に良いと思った点が二つあります。一つは主体的・対話的で深い学びについて、幼保小連携において主体性や対話性はやりやすいのですが、深さをどのようにするかというところで悩まれている園も多いので、体を使って、自然と表現して作ってというところを切り口にしながら、深さも意識した取組をしていただいているところが参考になるのではないかと思いました。

 そして、取組のプロセスにおいて、幼保小連携事業のスタートの時に書類や計画を作り実行するという過程の中で、書類を作って安心するということではいけないという議論がありましたが、今回のスライド20にある、最初にこうしようと決められていたというより、取り組みながら見えてきたものがあるというような取り組み方は非常に参考になると思いました。しかし、大津市の大きい小学校の中では30以上の保育所、幼稚園から入学してくるという実態もあり、その中で全く同じようにやっていくことは難しいとも思いますので、是非、今後も教育委員会と一緒に取り組み方を見出していけると良いと思いました。

 また、お互いに見習うところがあるということが大事だと思います。安心できる学校づくりということで、不登校の原因について、文部科学省の調査では無気力とされている中で、県内で協議会がアンケートしてくださると、一番は先生が原因だったということをどのように捉えるのか。先生方が頑張ってくださっている中で、何が課題であるのか。また、小学校で当たり前とされている教室運営や学校運営などが先生の制圧になってしまっていないか、その部分で幼保小連携によって子どもの視点に立つということがこの取組で見えてきているのではないか、そのような意味でも非常に参考になる取組なのではないかと思いました。

 

(福永教育長)

 大杉副知事がおっしゃっていた20枚目のスライドのカリキュラムから感じたのですが、1、2、3月の先生の関わりというところで、「一人ひとりの良さや成長を認め、充実感を持って生活できるようにする」とありますが、冒頭に知事からも話があったように、小学校に入った時に「分からない」と言える学校づくりをするという意味で、声掛けができ、認め合える雰囲気に繋がる非常に素晴らしい取組だと思いましたので、全ての先生方に意識していただけると、学校は子ども達にとって更に良い場所になると思いました。

 

(三日月知事)

 素晴らしい取組をしていただいていると思いました。私から話をさせていただく前に、折角ゲストの皆様にお越しいただいておりますので、御要望事項などがありましたらお聞かせ願います。

 

(日野町立南比都佐小学校植田教諭)

 現場にいてやっていただきたいと思うことは、人材を増やしていただくことです。ただ、単に先生を増やして欲しいということではなく、小学校教諭が保幼に学びに行ける時間が確保できるようにしていただけたら、授業力も向上し、もっと子ども達も楽しく学校に通えるようになると思うので、ありがたいです。特に、幼保小連携は小学校の教員が幼稚園や保育園に出向くことで意味があると思いますので、そのような時間が確保できるようにしてただきたいですし、保幼の先生方にも小学校へ来ていただき、私たちの取組を見ていただけるような時間の確保ができるシステムになればと思っております。

(三日月知事)

 ありがとうございます。

 大杉副知事には滋賀県に副知事として来ていただく前に、国で幼保小連携のプログラムを主導していただいており、県でも架け橋プログラムや南比都佐で行っていただいている学びに向かう力推進事業にも力を入れていただき、このような取組が出来たことは非常に意義があると思っていますが。最後のページに書いていただいている課題や植田先生がおっしゃっていた現場の先生方が保幼へ、そして保幼の先生方が小学校へ行き来できる、そのような時間を確保できる取組が非常に大事だと思いました。最後のスライドの二つ目にある「命が宿ってから義務教育修了までの16年プロジェクト」に関することも非常に重要な御指摘だと思うのですが、来年度から作ろうとする幼児教育センターは、教育委員会として全県的に作っていこうとしているのでしょうか。私は全県的に作っていく必要があると思うのですが。

 

(福永教育長)

 幼児教育センターは来年から作っていきたいと考えておりますが、まずは本日御発表いただいたような取組を全県的に広めていくことも重要だと思っております。幼保の先生方に小学校のことを知っていただく、また、どのような取組が出来るかを研究していくことや、「命が宿ってから義務教育終了までの16年プロジェクト」は出産前から義務教育が終了するまでの16年間だと思いますので、この点は健康医療福祉部など様々な県庁の機関とも連携しながら取組を進めたいと思っております。制度的に難しい部分もありますが、乗り越えてやっていくことが大事だと思いますので、知事がおっしゃっている「子ども・子ども・子ども」という視点を大切に、子ども政策推進本部でしっかり議論を進め、教育委員会においても、人員の面も含め、どのようにしていくのか検討していきたいと思っております。

 

(三日月知事)

 現場で取り組んでいただいて成果がでた取組等は校園だけでなく、町内にも広めたいということ、そして、年長さんや一年生だけでなく、もう少し長い時間で捉え、その子に応じたプログラムを、保護者の方も含め、考えていくべきではないかという御示唆は大事だと思いました。大杉副知事とも名称はこれで良いのかということを話しているのですが、来年度幼児教育センターを県で作り、それぞれの現場をフォローしていくことになるので、是非具体的に中身を整えていけるようにしたいと思います。

 

(福永教育長)

 ありがとうございます。その他に御意見等ございますでしょうか。

 まだまだ御意見等があろうかと思いますが、このテーマに関する意見交換は終了させていただきます。ゲストの皆様には大変貴重な御意見等を賜り、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

 

(三日月知事)

 ゲストの皆様、本日はありがとうございました。非常にお忙しくされている中、素晴らしい取組について共有していただけましたことに感謝申し上げます。また機会がありましたら、現場へ伺い子ども達と触れ合いたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

(福永教育長)

 ありがとうございます。それではゲストの皆様におかれましては、席の御移動をお願いいたします。

 

 それでは続きまして議題3「高等専門学校の設置を契機とした理系人材の育成・裾野拡大」について入らせていただきます。本日は立命館大学の高山茂理工学部長にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

早速ではございますが、高山理工学部長より御発表いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

(立命館大学高山理工学部長)

 立命館大学の高山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、滋賀県の6大学理系学部学部長懇談会を持ちまして、滋賀県の社会価値創出に向けた理系人材基盤の構築に向けて、理系人材育成のための提言書を作成しておりますので、その中間報告をさせていただきます。

 スライド2枚目は、皆さん御存知だと思いますが、18歳人口が減少している、もしくは日本自体の人口が減少している、とりわけ15歳から64歳の生産に寄与する人口が、この17年間の間に1,200万人減少しているという資料でございます。

 スライド3枚目には理系学部の学生数の推移等を示しております。大学生の中で理系の学生は、1999年には63万人ほどでピークを迎えていたのですが、2013年には8万人減ということで、21パーセント程度になっています。右側の表は世界の主要国との対比でございます。右の表を見ると、韓国では6、70パーセントほどが理系の学部を目指しておりますが、日本では21パーセントほどと理系の学生の割合が非常に低い状況でございます。左の表は卒業生数ということで、総数を見ると世界の中でも低位でございます。割合も低く、総数も低いという現状があります。

 4枚目のスライドは、大学入学者に占める理工系学部入学者の割合を示しており、現在17パーセントと主要各国の中で最下位でございます。

 5枚目のスライドは、全大学学部卒業生に占める理工系の卒業生の割合の変化ですが、5年間の間で日本の割合はほとんど増えておりません。総数も少なく、増える傾向もないという状況でございます。

 6枚目のスライドは新しいデータであり、先ほど2013年は21.6パーセントであると申し上げましたが、現在は20.4パーセントにまで下がっており、近隣の国、もしくは主要国の中でも比率が非常に低いということをお知りおきいただきたいと思います。

 7枚目のスライドは、中学・高校の文理志向等の割合を示したデータでございます。まず、左側にある表から、中学三年生の時の理系の志向は全体で3割、文系も3割、分からないという回答が38パーセントほどになっておりますが、高校三年生になると、志向に関しては、理系は変わっていないのですが、文系は51パーセントとなっており、どこから増えたかというと、分からないという方の半分ほどが文系志向に入ってきたということになります。これは志向になりますが、右のデータは実際に理系のコースに進んでいる学生の割合を示すものとなっております。高三の全体で22パーセントになっており、30パーセントは志向するのですが、コースに入るのは22パーセントということで、男性は3割減の27パーセント、女性は2割減の16パーセントということでございます。ただし、この22パーセントに関して、赤で囲みを入れておりますが、理系志向であるが、文系のコースにいる子どもは8パーセント、文系志向であるが理系のコースにいる子どもは13パーセントおり、引き算すると5パーセントなので、22パーセントから5を引いていただくと、だいたい実態に近い数字になるのではないかと思います。

 8枚目のスライドは研究者、技術者、生産工程従事者の就業状況でございますが、上から三行目の製造技術者(開発)はオレンジとブルーが均衡しているように見えます。オレンジが学部卒、ブルーが修士で、学部卒は35.6パーセント、修士は57パーセントでございます。そこから5つ下の製造技術者ですが、開発を除くという部分になると、オレンジの部分が占める割が多くなり、修士が27.6パーセント、学部卒が53.7パーセントになります。その下の建築土木になると、ブルーの部分が更に少なくなり、修士が27.4パーセント、学部卒が66.8パーセントとなります。また、驚かれるかもしれませんが、情報処理、通信技術者の分野になりますと、オレンジが多くなり、学部卒が66.7パーセント、修士が28.8パーセントになります。情報という分野は理系というよりも学際的な分野として分類され、文系の方も情報の分野に入りつつあるのだと思われます。

 9枚目のスライドは理系分野における女子学生、女性研究者の比率になります。左側の表からは多くの女子学生が理系分野を進路先として選択していないことが見て取れると思います。上から二つ目の社会科学は85万人ほどいらっしゃるのですが、そのうちの66.4パーセントは男性、女性が33.6パーセント程度となっております。工学系は40万人の学生がいますが、そのうち女性は12.3パーセント、農学部は7.4万人いますが、女性の割合が43.6パーセント、理学系は8万人いますが、女性は26.2パーセントという状況でございます。左側の例は女性研究者の推移でございまして、増加しておりますが、10年間の間で増えているのは2.8パーセントです。人数で言うと3万人程度で、まだまだ伸びが少ない状況でございます。

 10枚目のスライドは、大学学部への女性入学者に占める理工系分野の女性入学者の割合ですが、世界の中で最下位でございます。

 11枚目のスライドに入り、これらのデータはショッキングなものですが、高等教育に携わる理系の大学教員としては人材育成に関して大変な危機感を持っております。理系教員による理系人材のおおまかな見立ては、自然科学や工学などの理系分野に関心を持ち、論理的思考を基に科学的な知識や多様な技能を活用しながら社会的価値や学術的価値を創造することにより、社会や学術界に貢献することができる人材、もしくは、科学技術の発展やイノベーションの創出に欠かせない存在であり、国際競争力の向上や地域社会の活性化にも大きく寄与するという理解をしております。しかし、今の我が国では理系人材の不足や質の低下が懸念されており、国際競争力の沈下が起きつつあるということが現状です。

 12枚目のスライドに入りまして、滋賀県は人口が少ないので、理系人材の母体層が少なく、なおかつ理系分野への進学率や就職率も決して高い傾向にあるものではございません。この状況を鑑みながら、県および、県内6大学理系学部、県内企業、県民および地域が産官学地連携のもと、理系人材の母体層形成と育成に向けた取組をより積極的に推進する必要性があると感じております。

 そのために、県内6大学理系学部の学部長が環びわ湖大学・地域コンソーシアムにおいて、我々が有している教育や高大連携を背景として、滋賀県における理系人材の母体層形成と育成に向けた課題と提言を、我々の責務として県内社会に発信することにいたしました。

 課題や提言の発信に向けて、議論や検討の場として、環びわ湖大学・地域コンソーシアムのところに、滋賀県6大学理系学部学部長懇談会というものを置いていただけることとなりました。15ページはそのリストを掲載しております。

 16枚目のスライドは現段階でのイメージではありますが、このような分野における提言書が我々の責任の下に作れたらということで考えているものです。

 17枚目のスライドですが、理系学部長が理系人材育成のために提言しようとする意義は、大学理系学部において教育・研究、人材育成、社会価値創造のフロントラインに立つ学部長が、官庁主導による検討・提言・提起を鑑みながら、「理系志向の母体層や理系学生の資質の経年変化」、「社会の変容」、「技術開発と盛衰」、「社会価値の変容」、「国際的科学技術動向」、「産業界との連携」、「社会ニーズ」等を背景に、現場感覚に基づく「理系人材の空洞化」の危機感と施策について理系教育者の想いとして表明し、滋賀県における産官学地の関係者に共感を得ながら、実効的な取組を示唆・推進することにあると考えております。

 18枚目のスライドで、どのようにしてまとめるかということですが、まず6つの観点を置きまして、その観点ごとに11人の学部長が課題に思うことと提言することを集約するという形で進めてまいります。

 19枚目のスライドには観点1のカテゴリーにおいて、県内各大学理系学部による取組の展開として、我々自身がどのような一層の取組が出来るのかというところを、現状と課題を認識しつつ提言をしたということでございます。細部の文章については掲載しておりませんが、挙げられた課題名と提言名をリストアップさせていただいております。それぞれの大学が頑張っておりますが、限界があるということ、理系学部の総合的な情報発信が不足している、博士人材に対する社会的価値についての理解が深まらないということや、中等教育での文理選択などが挙げられています。

 2つ目の観点は小中高大連携による理系人材育成ということでございます。小中高大における人材や教育活動の相互交流がないということを指摘しております。中等教育における文理選択のこと、もしくは実践的な理科実験教育の限界性があるということ、理系の中の進路形成に対する十分な理解が得られていないということがあります。

 3つ目の観点は理系女子生徒・学生の育成でございます。まず課題としては、女子生徒特有の関心事に対する情報が不足しております。また、旧来の社会通念に基づくメンタルバリアが存在するということ、また理系ロールモデルの少なさ、理系女性教員の少なさ、そして理系女性に対する社会支援の不十分さと不鮮明さにより生じる将来的不安というものを課題として挙げております。

 4つ目の観点は、産業界による理系人材の育成ということで、文理選択を考える中等教育の生徒は企業の姿が見通せていません。そしてまた、産業界における人材のリカレント教育やリスキリング教育への対応がまだ充実できていないということでございます。

 5つ目の観点は、官および地域による理系人材育成ということで、理系人材に対する地域の理解がまだ不十分であるのではないかということ、また中等教育での文理選択、そして理系進学を果たした生徒・学生への経済的な支援が必要であるということ、理系人材の活用が十分になされていないのではないかということ、最後に実践的な理科実験を担当する理系教諭が不足しているのではないかということを挙げております。

 6つ目の観点として、文系人材に向けた理系分野に対する関心の醸成ということで、社会的な先入観に起因する理系進路に対する理解不足、もしくは将来のAI基盤社会を鑑みた文系人材の進路形成に対する教育プログラムの未整備、そして文理融合な学際分野に対する中学・高校生、保護者、教諭の不理解、文理選択に囚われない多様な人材を受け入れることができる制度や環境の不足を挙げております。これらについて、それぞれ提言を挙げておりますが、直近的な取組、もしくは中期的なプロジェクトによる取組、短期的なプロジェクトによる取組という分類分けをしました。

 25枚目のスライドに、直近の取組として示唆する提言を並べて13項目ほどリストアップしております。この中でキーワードになるような、目につくような言葉を拾い、再整備したものが26枚目のスライドになります。直近の取組としてすぐに出来るのではないかというものは、行事企画としては、科学・技術フェア、サイエンス・キャンプ、産学官連携のフェア、会合企画としては理系科目に関わる小中高大の先生方のFD交流会、もしくはそのようなものを議論するコンソーシアムの構成、交流活動としては女性の進路形成に関わるロールモデルの共有、中等教育・高等教育における女子学生の交流会、そして広報活動でございます。

 27枚目のスライドには、短期的なプロジェクトによる取組を示唆する提言を取りまとめました。この中で目につく言葉等を再整理したものが28枚目のスライドでございます。行事企画としては、理系公開講座の開催、生徒・学生のインターンシップ、理科教育や実践的実験の充実、正課外での体験型企画等でございます。方針・施策としましては、現中等教育教諭のリスキリングとコミュニティの形成、もしくは理系大学院修了者の教諭への積極採用、県内在住生徒への経済支援でございますし、女子学生支援としては、女性特有の多様なライフサイクルに応じた環境整備、官民をあげた諸支援策でございます。

 最後に29枚目のスライドにおいて、中期的なプロジェクトによる取組を示唆する提言を上げましたが、ここからもキーワードを拾い上げ、再整理しましたところ、人材開発におきましては、理系シニア人材の活用、リスキリング・リカレント教育プログラムの構築、方針・施策におきましては、先端科学分野の展開、世界との、また県内外との大学のネットワーク化でございます。プログラム開発としましては、文系人材を対象とした理系的素養修得プログラム、文理融合型の学位プログラム、文理選択に関わることについて、再検討・再整理するということにしてはどうかということでございます。

 今後、この提言書の充実化と完成に向けて尽力してまいりたいと思います。ありがとうございました。

(福永教育長)

 ありがとうございました。続きまして、事務局より説明をお願いいたします。

 

(高専設置準備室藤ノ井室長)

 最初に、企業・大学との連携でございます。資料左側に、取組についての基本的な考え方を整理しております。子ども達はどうしても進学・受験に当たって、文理の選択を迫られる現状がございますが、本来は子ども達自身の興味や夢、そして探究や夢の実現のために、何に重点を置いて学びを深めるか、理系を含めた幅広い学びや、仕事に繋がる機会をどれだけ持てるかということが大切と考えております。このため、子ども達が不必要に選択肢を狭めることがないよう、また学校での学びが充実するように、子ども達に体験と学びを繋げる機会を増やし、あえて申し上げますが、例えば女子は理系に向いていないなどの理系に対するバイアスの解消に繋がるような取組を、大学や企業の皆様等を含めた社会全体で取り組む機運を作っていきたいと考えております。

資料右側には今後に向けた取組の方向性を二つ挙げさせていただいております。一つ目は、産官学連携によるSTEAM体験プログラムの創出ということで、企業や団体などを中心に大学とも連携しながら、放課後児童クラブなどの場でSTEAMをキーワードに子ども達が興味を持ち、考え、実現していく力に繋がるプログラムの提供を、今年度始めさせていただいている「こどなBASE」で実施していきたいと考えております。

 先に2ページを御覧ください。この「こどなBASE」は子ども達に滋賀の様々な仕事や思いに触れてもらう、あるいは知ってもらう交流プログラムを提供することを通じまして、子ども達の将来の夢の選択肢を広げ、大人にとっても子どもの視点で持続可能な社会を考えていくことを目指す仕組みとなっており、先月末には知事から御発表いただき、また本日午後には大杉副知事にも御参加いただき、キックオフトークセッションを開催し、本格的に多くの皆様の参画を募ってまいりたいと考えております。

 1ページ目にお戻りください。二つ目の取組、方向性でございますが、県内の大学が環びわ湖大学・地域コンソーシアムで連携し、「子どもの知と創る」を応援し、理系人材の拡大に繋げる取組で、県も一緒に取り組んでまいりたいと考えております。特に現在、大学ごとに発信されている、科学を切り口にした体験情報の一元化や、サイエンス体験の拡充、保護者向けの理系キャリア講座、動画なども活用し研究現場を見て感じるキャンパスツアーなど、コンソーシアムで大学の皆様と相談しながら、様々な取組を展開してまいりたいと思います。

 続いて3ページでございます。本日の議題の表記にも入れさせていただいておりますが、本県では県内で初めての高等専門学校となる県立高等専門学校を令和10年4月に野洲市に開校することとしております。昨年度末に目指す学校像、カリキュラムの概要、設置場所等をまとめた「基本構想1.0」を策定し、これに基づき、現在設置準備を進めております。県立高専での学びのコンセプト、特徴といたしまして、記載のように「高専の強み」「令和らしさ」「滋賀らしさ」の三つをキーワードに置きながら、情報技術を基盤とした学び、社会実装に向けて実践・挑戦を重視した学び、そのような実践、挑戦を通じて新たな創造を実現する学びを具体化していきたいと考えております。

なお、総合学科一学科とした上で、工業系になりますが、機械系、電気電子系、情報技術系、建設系、ここでは土木をイメージしておりますが、この4コースを設け、二年次からコース選択をしてもらおうと思っております。

このような学びを通じまして、設置目的に記載のとおり、大きく二つの役割を果たしていきたいと考えております。一つ目は滋賀発で次の時代の社会を支える高等専門人材の育成ということです。キーワードとしましては、「専門性」「実践力」「価値創造力」「協働して挑む」ということを掲げております。二つ目は技術者育成、交流のハブとして地域産業・社会に貢献していこうということでございます。

また、設置意義としては記載のとおりでございますが、特に学生の皆さんの視点から、現在、毎年度、現在県内の中学生の60人から70人程度が、県内に高専がないということで、県外の高専に進学されているということが分かっております。県立高専が出来れば、県内中学生にとって「通える高専」として進路の選択肢の大きな一つとして考えていただくことができると考えております。

今後、校舎等や施設整備等のハード面、また教員の確保やカリキュラム編成といったソフト面の両面にわたり、設置準備を一層本格化していき、令和8年10月に認可申請、そして令和10年4月に設置・開校を迎えたいと考えております。

 4ページ目を御覧ください。私共としましては、県立高専の設置を契機としまして、資料に記載のような流れを創出し、理系人材の増加に繋げていくことが出来ればと考えているところです。資料右下に記載の通り、近隣高専においても様々な取組がなされております。実は、正直なところ、県立高専の設置の認知度がまだまだ低いという状況でございます。先日実施いたしましたオンラインアンケートでは、「県内に高専が出来ることを知っている」と回答をされたのが、県内の皆様で約57パーセント、近隣8府県の皆様では3.6パーセントという結果でございました。こうしたこともあり、令和10年の開校を待たずに認知度の向上を図り、将来の県立高専への入学生確保のねらいも持ちつつ、来年度以降、先進的な取組を参考に、近隣高専を含めた様々な主体の協力を仰ぎながら、大学の皆様も含め、子ども達が科学や技術の楽しさを感じ、興味・関心を覚える機会の提供に力を入れてまいりたいと考えております。

 説明は以上でございます。理系人材の育成・裾野拡大に向けて御意見や御示唆をいただけましたら幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

(福永教育長)

 高山理工学部長の御説明およびただいまの事務局説明を踏まえまして、皆様から御意見等伺ってまいりたいと思います。

(塚本委員)

 御説明どうもありがとうございました。

 旧来の社会通念によるメンタルバリアという御指摘もありましたが、社会の理系人材に寄せる思い込みなどが、女性の進出を阻害する要因になっているとのことで、冒頭に私が申し上げました、どのような社会を創っていくのかという点で、大きな変革を訴えていかなければならないという役目も私たちにはあると思いながら聞かせていただきました。

また、理系への興味を持つ人材を多く育てるために、実体験やイベントが必要だと事務局からの説明にありましたが、私自身を振り返りましても、中学校時代の理系の科目に苦手意識を持ってしまったということもございました。先ほど高山先生から、志向として中学生から高校生で数値に変化はあまりないとの御説明がありましたが、授業が分かりにくい、苦手意識が残ってしまうと、将来の進路選択にも大きく影響を与えてしまうと思うので、当然のことながら、教育大綱の中にもありますが、分かりやすいと実感できるような授業の構築というのは、常に真剣に向き合わなければならないことだと思いました。授業の苦手意識から人材の取りこぼしがないように努めていくべきだと思いました。

 

(福永教育長)

 私も、子ども達にとっては、理系の科目である理科や数学は難しいと捉えられているのではないかと感じているのですが、学生の姿から高山先生が感じてらっしゃることはありますか。

 

(立命館大学高山理工学部長)

 御意見ありがとうございます。賛同すべき点や御質問等もあろうかと思います。

 先の議題にありました幼保小連携の資料も見たのですが、小学校や保育園、幼稚園の子たちは自然が大好きですよね。それを理科と書いていますけれども、そのような気持ちを持続して将来にも繋げていただきたいのですが、やはり学年が進むにつれ、国として教えないといけないような内容を詰め込まれます。時間的余裕がないということは十分に理解しております。それでも、子ども達が小さい時に持っていた淡い思い、将来の夢に描き続けることをサポートする環境を、我々が持たなければならないのではないかと感じております。

 授業についても、中等教育における先生方の涙ぐましい努力を我々も理解しておりますが、自然と触れ合う、有機的なものと触れ合う、人と触れ合う等、実践的な実験や御指導は、部活動や教育指導の中で、もしくは自分自身のキャリアアップについて考えないといけない状況では難しいのではないかと思います。そのような部分を、大学は社会と教育との狭間で色々なノウハウを持っておりますので、中等、初等教育に繋げられるようなことに取り組みたいとも考えております。小学生は、看護師になりたい、パイロットになりたい、バスの運転手さんになりたいなど、素晴らしい夢を持っていますので、それをサポートするよう環境を整えていければと思っております。

 

(野村委員)

 御説明ありがとうございました。大学の連携は専門的な分野で、なかなか意見が出せないのですが、家の近くにあるみかんの木がだんだん青から黄色になっていく過程があり、小さな子どもが青いみかんを取りたいと思っているところ、「もう少し待っていよな。もうちょっとしたら甘くなるから。」と言うと、「なんで?」と、一つひとつのことに「なんで?なんで?」と質問してくるのですが、その「なんで?」に私たちもどのように答えるのか、そのようなことから、子どもの中にある不思議を解読していかなければならないと感じております。それが先ほどおっしゃったように、小中高と年齢が上がるにつれ、「なんで?」の部分が難しくなっていき、どんどん探っていかなければならないところを周りの方達や先生方が一緒になってそれを探究していけると更に深まっていくのではないかと思っております。そして、地域でも様々な活動がなされており、しゃぼん玉おじさんがいらっしゃるのですが、その方はしゃぼん玉がどうしたら割れないのかのようなことを話されていたり、学校や教育現場だけでなく、地域の中で知っていくことも沢山あると思いますので、そのような部分での発信を色々な分野でやっていただけると良いと思いました。

 

(福永教育長)

 私も様々な場を作ることが必要と思っております。以前商工観光労働部長をしていた時に発明協会さんと関わりがありまして、子ども達に発明やモノを考える楽しさを伝える取組をやっていただいており、このような場を作ることで関心を持つ子どもを増やすことができるのではないかと思い出しました。

(土井委員)

 貴重な御報告ありがとうございました。私は文系なのですが、大学人ですので、本学でも理系人材をどうするのかということは大きな課題になっていることから、考えていることをいくつか申し上げます。

 一つは、大学はプロセスで、若い人達に生涯のある部分を過ごしてもらう場になります。したがって、基本的に大学教育を考える上で重要になるのは、大学への人のインプットと、大学から輩出する人材のアウトプットをどうするのかということだと思います。

 一つ目の課題はインプットの部分、つまり大学に進学してくる学生数が減っているという問題です。これは理系に限らず全体が減っている中で、特に理系が御苦労されている点をどうするかという問題だと思います。子どもが減ってきている以上、18歳人口を急激に増やすのは難しいですから、一つ考えられるのは、大学進学率を上げていくことです。また、理系の場合ですと、男性に限らずこれまで以上に女性の関心を高めること、さらに、外国からの人材をどのように取り入れていくかということも問題になってくると思います。

 全国的に考えるのであれば、このようなことを全体として考えていくことになりますが、県として考える場合には、県内で育った人材をどう活かすかという問題と、どのようにして県外から滋賀県に来ていただくかという問題が出てくると思います。

 それと同時に、二つ目にアウトプットの問題、すなわち県内6大学等で育成していただいた学生をどのように県内で受け入れるのか、また県外に輩出していくかという問題が出てきます。県として取り組むことを考えますと、できる限り優れた人材には県内に定着していただきたい、という話になりますので、そうしますと教育だけの問題ではなく、当然県の産業構造の問題にもなってきます。どのような人材を県の産業のために活用していくのかを真剣に考えませんと、大学などの教育だけを充実して、結局人材は県外に出て行ってしまうということでは、県として何をしているのかということになりかねませんので、この点について県として本腰を入れて、知事部局も含めて取り組んでいくべきだと思いました。特に外国からの人材を射程に入れますと、大きな問題になってきますので、県の在り方を考えていく必要があると思います。

 またもう一つ重要なことは、魅力ある授業をしていくということが、中学・高校において大事なのですが、理系の学問に必要とされている知識量が膨大になってきており、大学でも学部、修士課程、博士課程というように積み上げられてきています。そのような場合の大きな問題は、その過程においてドロップアウトすると次のステップに進めないという点であり、中学、高校の段階で学習の進度を早めるということも重要なのですが、そこで躓いた子ども達をドロップアウトさせず、過程の中に戻し、次のステップに進めていくことが大切になります。そのためには、個性に応じた教育、あるいは個別最適な学びに取り組んでいくことが重要ではないかと思います。

 それと同時に、知識量が増えていく以上、教育期間が長期化していくことにならざるを得ません。社会科学系でも、例えば法曹になりたいということであればロースクールへ行きますので、学部から2年くらい伸びていますが、理系は修士課程、さらに博士後期課程へとかなり伸びてきています。そうしますと社会の方が、そのような多くの知識や高い技能を育てるために必要な教育期間を支えるだけの経済的支援をどうするのか、高い専門的能力を有する技術者を人事の面でどのように処遇するかについて考える必要があり、企業も含め、社会全体で意識改革を行う必要があるのではないかと思います。このことは文系も同じで、専門職大学院を含めて大学院化を進めているのですが、企業などの感触が必ずしも良くありません。若くて元気の良い子を採りたいという企業の意向も分かりますが、社会が高度化していく中でそれに対応する専門人材をどのように受け入れていくのか、また必要な学費をどのように支援していくのかということも真剣に考えないといけないのだろうと思います。

 最後に、大学や企業の方が理系人材育成のために、様々なプログラムに協力してくださるのは大変有り難く、私もこれを進めていくべきだと思います。ただ、教育委員会の場でも申し上げているのですが、その際には、休日の部活動の地域移行の問題と関連付けて、部活動を地域に移すという問題ではなく、休日は地域へ移管するという方向で考えたほうが良いと思います。そして、その際に、企業や大学が積極的に関与していただく形にするのがよいのではないでしょうか。月曜から金曜のカリキュラムの中に、更に色々なものを組み込んでいくことになりますと、学校は既に手一杯であるというのが実情ですし、他方、現状の部活動を休日について全て地域に移管するということは非常に難しい問題になってきています。そこは発想を変えて、例えば土曜日に部活動だけでなく、理系の教育や文化活動、地域ボランティアをする子もいる、というようにして広く地域や社会で受け入れていくという体制を整えていく必要があると思います。そのためには、教育委員会においても全体の施策を統合して考えるべきでしょうし、知事部局からもご支援いただきたいと思います。

 長くなりましたが、私からの意見は以上です。

(窪田委員)

 御報告ありがとうございました。

 日本での理系人材の不足あるいは質の低下というところはよく分かりました。それを滋賀県内で、実際にどのような人材が不足しているのかという具体像や、令和10年度開校予定の高専との関連で、先ほど卒業生が滋賀で活躍していけるのかという御意見もあったかと思いますが、高専の卒業生が県内で今後活躍していけるか、友人から、理系の友達は関西には仕事がないから東京に行くということも聞いたりしますので、業種もあるのかもしれませんが、その辺りを折角作る高専の卒業生が、滋賀県で他府県とも交流しながら活躍できるような形で、今の県の現状をどのように分析していくのかということが大切だと思いました。

 

(大杉副知事)

 高山先生ありがとうございました。

 この人づくりの課題は、様々な関係者がいる中で、どこからキックオフしていくのかという中で、先生方が環びわに懇談会を立ち上げて下さり、リードしていただいているということで、学校をサポートする、大学企業の立場で学校に負担を増やさない形で考えて下さっているということで、非常に感謝申し上げます。提言の中で来年度予算化できることを考えていきたいと思いますし、企業との関係においても、これは高専の共創宣言も含めてですが、今後企業における処遇の在り方、企業と連携した奨学金等が出来ないのかも含めて、しっかり呼びかけていきたいと思います。

 併せて、「こどなBASE」も放課後NPOアフタースクールと一緒にやっていて、放課後あるいは土日の使い方もどのように変えていけるのかという非常に大きなきっかけになるのではないかと思っています。これから沢山の賛同者を得て広めていきたいと思っておりますので、是非御意見等賜りたいと思います。

 

(三日月知事)

 ありがとうございます。とても貴重で今日的な重要テーマだと思いました。提言が12月にまとまる予定とのことですが、是非まとまった際には知事室にお越しいただき、メディアの皆様にも喚起していけると良いと思いました。

 そして、御報告を聞きながら、理系人材の再定義も必要だと考えておりました。文系との対比としての理系ではなく、新たな形の創造やイノベーションに欠かせない人材というような括り方ができると違う境地に行けるのではないかと思いました。したがってこの提言に基づいて、直近、短期、中期のプロジェクト等も御示唆いただいておりますが、県としても2040年、2050年あたりを展望しながらどのような取組をしていくのかということを、企業の皆さんや大学関係者の皆さんとも考えていければと思っております。

STEAM教育や体験活動は大変重要だと思いました。放課後だけで良いのか、幼少期からの取組があっても良いのではないか、同様の御提言を例えば県の発明協会からもいただいておりますので、少し広げて考えても良いのではないかと思います。先ほどの幼保小連携の内容とも重なりますが、理系科目の先生の部会や幼稚園、保育園、小学校の先生方の部会との連携や、中高の進路指導の先生方ともこのような観点に立ってどのような取組が出来るのか考えていくことも重要なのではないかと思いました。とても重要なテーマだと思いましたので、改めて議論したいと思いました。ありがとうございました。

 

(立命館大学高山理工学部長)

 知事、御助言ありがとうございました。根本的なところでの認識を合わせておきたいのですが、理系の学部長が集まってこのような提言をしようということで、大学という立場のバイアスがかかってしまいますが、我々が述べる理系人材というのは、理系的な素養をもった人材を育成しようということで、決して我田引水の取組をしようというわけではなく、滋賀県の理系素養のバイアスを上げようということでございます。そのために小中高大、幼保も含め、みんなで連携してやっていく環境をつくっていきたいと考えております。

 もう一つ、産業構造について触れていただきましたが、今のままの滋賀県の産業構造では優秀なリーダーシップを作っても受け手がありません。しかし都会では、就職する場所がなければ自分で作っております。アントレプレナーシップで起業しております。このようなマインドを持った人たちと環境を整え、滋賀県の新しい産業構造を作るというところまで考えていければと思っております。理系の知識が多いというのはその通りではございますが、このことについては、また別に議論させていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

 

(福永教育長)

 ありがとうございました。

 終了時間に至っておりますので、この件については以上とさせていただきます。皆様からいただきました御意見を踏まえまして、滋賀の子ども達により良い学びが出来るようにお互いが連携しながら取組を進めていきたいと思います。

 以上をもちまして、令和5年度第4回滋賀県総合教育会議を閉会いたします。長時間にわたり熱心に御議論いただき、誠にありがとうございました。

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