(教育長)
皆さんおはようございます。本日は、今年最後の定例記者会見となります。この1年、報道機関の皆様方のご協力やご支援に心より感謝申し上げます。
今年も、新型コロナウイルス感染症の影響が続いた1年でした。昨年、一昨年のように緊急事態宣言の発出こそありませんでしたが、子どもたちには学校生活で我慢をしてもらうことがありました。特に、2年前の春に入学した児童生徒の皆さんは、ずっとコロナ禍の中で学業に励んでいただき、様々な苦労や悩みがあったことに、心を寄せたいと思います。
そうした中で、彦根東高校と虎姫高校の新聞部の生徒の皆さんが、全国高等学校総合文化祭の高校新聞年間紙面審査において最優秀賞を受賞されたことや、八幡商業高校の生徒の皆さんが、全国高等学校簿記競技大会において2年連続で団体優勝されたこと、またインターハイや国体で優秀な成績を収められたことなど、子どもたちの活躍する姿を見ますと、非常に頼もしく感じているところです。
県教育委員会の取組に目を向けると、障害のある子どもとない子どもが共に学ぶ副籍制度を開始したことや、県立高校各校の魅力化に取り組んだこと、「滋賀県読書バリアフリー計画」を策定して、読書へのアクセスの確保を図ったことなど、様々な学びの充実を図ることができたと感じております。また8月には、滋賀ならではの学びである学習船「うみのこ」児童学習航海において60万人の乗船が達成されたなど、嬉しい出来事もございました。この「うみのこ」は、お亡くなりになりました武村正義元知事が発案されて始まった事業です。改めて武村元知事のご功績に敬意を表したいと思います。
この場をお借りして、地域や保護者の皆様をはじめ、関係の皆様のご理解とご支援をもとに様々な取組ができたことに感謝申し上げるとともに、令和5年は、子どもたちの学びのより一層の充実に尽力してまいる所存でございます。
さて、この冬は受験生の皆さんにとって、進学に向けた準備の時期となります。試験当日にこれまでの成果を出せるように、今一度、基本的な感染対策や、バランスのよい食事と十分な睡眠を呼びかけたいと思います。
なお、県立高校の入学者選抜は、万全の状態で臨めるように準備をしておりますので、安心して受験していただきたいと思っております。今後、県教育委員会のホームページに入学者選抜に向けての注意事項を掲載する予定をしておりますので、ぜひご覧ください。
それでは、配布資料に基づきまして説明いたします。2ページから3ページは「令和4年12月から令和5年1月の広報事項」としまして、教育委員会としての行事予定を掲載しています。後日、資料提供による詳細のお知らせなどを予定しておりますので、取材等を通じて発信いただければ幸いに存じます。
本日は、話題提供3点を説明させていただきます。
お手元の資料の4ページをご覧ください。「県立彦根工業高等学校生徒の製作品をふるさと納税制度における返礼品に登録することについて」ご説明します。
本県では、ふるさと納税制度においてさまざまな返礼品をご用意していますが、この度、県立彦根工業高等学校生徒の製作品である「偉人名言プレート」を返礼品に登録し、受付を開始しました。
この製品は、菜の花由来のバイオプラスチックを使用していますが、バイオプラスチックの原材料に菜の花を利用したのは彦根工業高校が日本で初めてと聞いております。また、県立学校生徒の製作品を県のふるさと納税における返礼品とする試みは、本県において初めてとなります。
彦根工業高等学校の生徒の皆さんは、カーボンニュートラルを学ぶ過程で菜種を利用したバイオプラスチックの作成技術を身につけ、文部科学省が認定した「マイスター・ハイスクール事業」において「近江マイスター」という科目を設定し、そこで企業の創始者の名言等を通して近江商人やものづくり精神について学びました。それらの学びの成果を一つの形として表したものが、この「偉人名言プレート」になります。そして、このような彦根工業高等学校の取組や学びを応援していただける方に感謝の気持ちを示すため、本製作品を返礼品として登録しました。
今回は、伊藤忠商事株式会社様および株式会社村田製作所様にご協力いただき、それぞれの企業の創始者の名言をお借りしております。生徒の製作品であるため、限定個数の受付とはなりますが、生徒の学びの結晶をぜひともお手に取っていただければと思います。
この偉人名言プレートの製作は、原材料である菜の花の栽培からバイオプラスチックの製作および加工まで、全て生徒が一から行ったものとなっています。詳しい製作過程は、配布資料に記載しておりますのでご参照ください。また、彦根工業高等学校では、プレートの他にも名札の作成や、3Dプリンターを活用した成形実験にも取り組んでいるところです。今後も、彦根工業高等学校の取組にご注目いただきますよう、よろしくお願いします。
併せまして、「県立学校応援寄附制度」についてご紹介させていただきます。本県のふるさと納税制度においては、寄附金の使い道として県立学校を指定できる制度の一つとして、「県立学校応援寄附制度」をご用意しております。先ほどの彦根工業高等学校も含め、現在、県立学校55校がそれぞれ実施したい取組を考え、その取組への応援をお願いしています。今回は、寄附金を活用させていただいた一例をご紹介します。膳所高等学校では「展示ラック」を、彦根東高等学校では「バレーボール」を購入させていただきました。応援いただきました皆様に改めてお礼申し上げます。
本日は、彦根工業高等学校の校長先生に同席いただいております。校長先生からも、一言お願いします。
(彦根工業高等学校校長)
よろしくお願いします。このような機会を設けていただきありがとうございます。報道各社の皆様には、本校の取組につきまして、ぜひ取り上げていただきたいと思っております。県立学校においては、各校の魅力化を進めています。本校に限らず、県立学校生徒の活躍を県内外に、広くお伝えいただけるようにお願い申し上げます。
先ほど、教育長から紹介いただいた「偉人名言プレート」は、前の机上に展示していますので、後ほどご覧ください。
(教育長)
ありがとうございます。こちらに実物がございますので、近くでご覧いただきたいと思います。よろしくお願いします。
次に2点目、資料の7ページをご覧ください。滋賀県インクルーシブ教育賞について紹介いたします。
この滋賀県インクルーシブ教育賞は、平成30年度に創設しまして、県内のすべての小中高等学校と特別支援学校の児童生徒を対象に、障害のあるなしにかかわらず、共生社会の形成に寄与したと考えられる地道な取組を表彰するものです。
今年度表彰しますのは、7校4組の児童生徒です。このうち、2組についてご紹介します。まず、栗東市立治田小学校と県立聾話学校小学部では、どのような人に対してもお互いの立場を認め合い、いたわりあい、喜びや苦しみを分かち合って、共に仲間として生きていくことができる子どもの育成を願って交流を開始し、今年で42年となります。どちらの児童も交流前はコミュニケーションがしっかりできるかと不安を感じていましたが、交流をする中で、治田小学校の児童は、聾話学校の児童の肩を叩いてから関わりをもつなどの工夫を行うようになりました。聾話学校児童は、手話以外にもコミュニケーションをとる方法があることに気づき、健聴者と聴覚障害者がどうしたら関われるのかを考えるようになりました。このように、同じ地域で学ぶ仲間として、互いに学び、成長し合う姿が見られました。
2組目は、大津清陵高等学校の昼間部の令和4年度A組の取組です。A組には身体障害のある生徒さんが一人おられて、入学時よりクラスメイトのサポートを受けながら、日々の学習や行事等に熱心に取り組んできました。周囲のクラスメイトの中にも、これまでの学校生活の中で不登校を経験するなど、困難さを感じていた生徒もいました。身体障害のある仲間と共に学校生活を送る中で、多様性や互いの困難さに気づき、自他を認めることにつなげることができました。
表彰式の開催予定は、一覧表のとおりです。私から表彰状を授与する予定ですが、場合によりまして代理が行うこともあります。ぜひ取材にお越しください。なお、県内の新型コロナウイルス感染症の状況によっては、表彰式の延期等も考えられますので、その際は改めて連絡させていただきます。
この表彰を通して、共に学び共に生きる児童生徒の心を育むとともに、県民のインクルーシブ教育や共生社会に対する理解促進を図る機会になることを願っています。
最後3点目、甲南高等養護学校の「門松作りの取組」についてご説明します。資料の9ページをご覧ください。
県立甲南高等養護学校は、今から16年前の平成19年に甲南高等学校に併設して開校しました。「社会的・職業的自立を目指す」こと、「仲間とともに豊かに学ぶ」ことを教育目標として、日々の教育活動に取り組んでおります。また、ノーマライゼーションの理念を掲げ、甲南高等学校と授業や学校行事、生徒会、部活動等で共に学びを進めています。
現在、軽度知的障害の生徒71名が在籍し、社会的・職業的自立を目指して、日々の学習活動に取り組んでおります。その取組のひとつに、今回ご紹介する門松作りの取組がございます。農業の学習で育成した葉ボタン、校内作業実習で製作した木製プランター、学校敷地内にある竹林から切り出した竹、そして地域の皆様のご協力でいただいた松や梅などを材料とし、生徒たちは仲間と協力して門松を製作します。出来上がった門松は、生徒自らが地域の企業や寺社に販売し、「本格的で見栄えがよい」「格安でありがたい」などの言葉をいただき、毎年、大変喜んでいただいています。
今年は、明後日、12月24日(土曜日)の10時から甲南高校の農場にて、予約をしていただいた方に向けて販売をいたします。本日は、こちらに、実物をご用意しました。ご覧いただきましたように、本格的な門松となっておりまして、年々問い合わせや予約が増加するほどに、ご好評いただいております。
この取組は、開校当初は5対の門松の製作・販売からスタートしました。今年は、100件を越える予約をいただいております。生徒たちは、手応えを感じながら門松作りに取り組み、地域の方からいただく評価を実感することで、自己肯定感を高め、成長しています。
本日は、甲南高等養護学校の校長先生に同席いただいております。校長先生からも、ひと言お願いします。
(甲南高等養護学校校長)
どうぞよろしくお願いいたします。先ほどのインクルーシブ教育賞と、この門松の製作・販売と二つの話題提供で取り上げていただき、本校にとって非常に光栄な機会となりましたことを喜んでおります。高等養護学校の生徒が門松の制作を主に製作販売をしておりますが、葉牡丹の育成に関しては、数が多くなりすぎまして、甲南高等学校の生徒も協力して育てています。そういった面でも、共に学び、共に育つということを実現しています。また、地域の方々に支えられ、そして、地域を支える人材としてしっかりと成長していくこと、販売会を通して地域の方々と交流をする喜びと、自分が地域の方を支えているという自信をもつことができるようになっております。この販売会等で子どもたちの頑張っている様子を取材し伝えていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
(教育長)
校長先生ありがとうございました。生徒が力を合わせて取り組んでおります。ぜひ取材をいただき、県民の皆様にお伝えいただければ幸いでございます。
私からの話題提供は以上でございます。
(中日新聞)
県内のコロナ感染者数が増え、学校での学級閉鎖も増えてきています。教育長はどのように把握しておられますか。
(教育長)
小学校、中学校での学級閉鎖や学年閉鎖はかなりの数が出ております。学級閉鎖等になり、子どもたちの学ぶ機会が失われるのは、非常に残念で厳しい状況ですので、コロナの感染症がおさまって、子どもたちがしっかり学べるようにと思っております。
2学期が間もなく終わって冬休みになります。この年末年始にどのような状況になるか分かりませんが、3学期はそれぞれの学年の仕上げの時期でもありますので、学びの機会の確保に努めたいと思います。
年齢別の感染者数が公表されていますが、5歳から9歳や10歳代の数が多いです。毎日300人から500人ぐらいの感染者数となっていますので、非常に憂慮しています。
各学校では、工夫をして取り組んでいただいていると思いますので、子どもたちが学び続けられるように、県教育委員会としてもしっかり取り組んでいきたいと考えております。
給食の時間については、黙食ということではなく、大声での会話は控えてもらいながら、工夫して楽しい給食の時間になるように取組を進めるよう、市町の教育委員会に対してお願いをしているところでございます。
(中日新聞)
学校での給食は、一律に黙食が基本となっているのでしょうか。
(教育長)
いえ、違います。基本的に黙食と決めておりません。ただ、対面で給食をするときには、工夫をしていただいていると思います。学年によって、子どもたちが充分に理解できていないときは、先生方が工夫していただいていると思います。従来から、県教育委員会として黙食を指導しておりませんが、現場では安全を考えて、黙食を指導しておられたのではないかと思います。給食の時間はマスクを外すことになりますので、できる限り気を付けつつ、会話をしながら食べてもよいという取扱いにしております。
(中日新聞)
特別支援学校について、先の議会で教室数の不足や教職員の給食提供が行われてない状況が指摘されましたが、どのようにお考えでしょうか。
(教育長)
先日の11月定例会で議員の方からの質問にもお答えさせていただきました。特別支援学校の教育環境の整備は県教育委員会に課せられた非常に重要なテーマであると認識しています。16校の各特別支援学校の状況等から、どう対応していけばいいのか、地域別の児童生徒の推移等を分析しながら検討を進めているところでございます。特に県南部の特別支援学校の児童生徒数が多いことから、ここをどうしていくか、検討を進めております。現在、草津養護学校においては、今年度から来年度にかけて増築を進めておりますが、完成しますと教室不足は改善されると認識しております。教職員の皆さんの給食についても、全員に提供できない学校があることを認識しておりますので、対応についても併せて検討する必要があると認識しております。
(中日新聞)
草津養護学校では、保護者が分離・新設を求めてきた経緯があると思います。今、増設を進められているので、分離・施設については、今のところ予定されていないのか、どのようにお考えでしょうか。
(教育長)
草津養護学校をはじめ、大規模な学校についてどういった対応をするか、ご要望いただいている分離・新設も含めてどうするかを検討しております。増設したから、分離・新設について検討しないということではございません。特に、大津南部、湖南地域は今後も人口が増加する可能性がありますので、大規模校である草津養護学校、同様に児童生徒数が多い野洲養護学校、大津市からご要望をいただいている北大津養護学校などトータルで、全体を見ながら、どうしていくのが一番良いのか検討しているところです。
(中日新聞)
教職員への給食提供については、法令等に明文化されているものではないですが、9割の教職員が給食を食べられていない学校があるという状況で、どう整備を進めていくお考えでしょうか。
(教育長)
子どもたちへの食育の観点から、一緒に同じものを食べて学ぶという意味で、教職員への給食の提供は重要だと思います。ただ、すべての先生に一緒に給食を食べていただくということでもありませんので、食育を進める観点から、希望される全ての先生に食べていただく方向性を求めていきたいと思います。施設の状況や調理員の状況などは、学校によって異なりますので、一つ一つ丁寧に対応していく必要があると思っています。
(滋賀報知新聞)
コロナに関して、8波のピークがこれからではないかとの話が飛び交っている中、間もなく県内各学校で2学期終了となります。これからの冬季休業にあたり、部活動について特別な対応等があれば教えてください。
(教育長)
中学校、高等学校の部活動については、基本的に制限を申し上げておりませんが、長期休業期間ですので、宿泊を伴う合宿や試合の際には、できる限り注意していただきたいと思います。練習試合等は、地域の感染状況を含めて検討した上で、計画・実施をしていただきたいです。日々の練習や活動を制限する予定はございません。
(滋賀報知新聞)
冒頭に彦根東高校等の生徒さんの活躍について紹介していただきましたが、それとは別に日本政策金融公庫が主催する高校生ビジネスグランプリで、大津商業高校と虎姫高校、立命館守山高校が全国ベスト100に入ったと聞いております。県内の児童生徒が全国を舞台に活躍されていることへの思いや期待を伺ってもよろしいでしょうか。
(教育長)
滋賀の高校生が、一生懸命頑張って、その成果が、その全国大会での入賞などに繋がっていくことは、県の高校教育を担当している者として、大変嬉しく思っています。全国で活躍する高校生の様子が、他の滋賀の高校生に伝わり、それぞれの生徒が、やりたいことや得意とすることをもっと伸ばしていくきっかけになれば、生徒の活躍がより素晴らしいものになっていくと感じております。
(中日新聞)
今月2日に、全滋賀教職員組合青年部が、働き方についての若手教職員に対するアンケート調査の結果について記者会見を開かれました。この結果については、教育長はご存知でしょうか。
(教育長)
私も内容は報道で見させていただきました。県教育委員会としても、先生方へ働き方のアンケート調査等をしております。しっかりと分析して、今後どういう取組を進めていけばよいのかを考えているところです。学校現場の先生方の長時間労働は少々緩和されましたが、まだまだ改善すべきことはたくさんあります。働き方改革や超過勤務や長時間勤務の縮減について、働き方改革の計画の策定を準備しておりますし、今後も引き続き取組を進めたいと思っています。
(中日新聞)
教育委員会でも同様の調査を行われていて、今回は組合の方で調査が行われました。県教委の調査は昨年のデータで、組合の調査は若手対象の今年のデータで、一概に比べることは難しいと思いますが、超過勤務について、組合の調査は県教委の調査に比べて、大きく上回るような結果だったと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
(教育長)
管理職や教諭の方、ベテラン、中堅、若手の方とおられる中で、若手の教職員の超過勤務、長時間勤務については傾向として把握しております。授業の準備等がベテランの先生よりも少し時間がかかる傾向があり、若手の先生が長時間学校に残って働いておられると承知しております。どれくらいの母数の調査であるか、どの年齢を調査対象にしているかによって、結果は少し違うことはあり得ると思います。